血液・免疫の病気(各論)

血液や免疫に関わる病気を学ぶ。共通するサイン、貧血、免疫が自分の体を攻撃する免疫介在性疾患、止血・凝固の異常、そして検査と看護(輸血を含む)のポイントを、図ではなく文章で読んで理解する。

1血液・免疫疾患のサイン

粘膜が白い(貧血)、白目や歯ぐきが黄色い(黄疸=溶血のことも)、点状出血やあざ・鼻血など出血傾向、元気消失、発熱などがサイン。口や結膜の粘膜の色の観察が手がかりになる。

本文で扱う血液・免疫の病気を、赤血球(貧血・溶血)・白血球/免疫・血小板/凝固の血球成分ごとに整理した分類表。粘膜の蒼白・黄疸・出血傾向といったサインが、どの成分の異常と結びつくかを見比べられる。

血液は、酸素を運ぶ赤血球、体を守る白血球、止血にはたらく血小板と、液体の血漿からなる。

これらや免疫に異常があると、全身にさまざまなサインが現れる。

口や結膜の粘膜が白っぽい場合は貧血を、黄色い場合は黄疸(赤血球が壊れる溶血や肝臓の病気でみられる)を疑う。

皮膚や粘膜に点状の出血が出る、あざ(皮下出血)ができやすい、鼻血が止まらないといった出血傾向は、血小板や凝固の異常を示す。

そのほか、元気消失や発熱もみられる。

粘膜の色は、看護師が観察できる重要な手がかりである。

2貧血

貧血は赤血球やヘモグロビンが不足した状態。原因により、骨髄が頑張って赤血球を増やそうとする再生性(出血・溶血)と、そうでない非再生性(造血の低下)に分けられる。腎性貧血・玉ねぎ中毒・ノミ寄生など原因はさまざま。

貧血は、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンが不足した状態で、粘膜の蒼白・元気消失・疲れやすさなどがみられる。

貧血は、骨髄の反応によって再生性と非再生性に分けて考える。

再生性貧血は、骨髄が新しい赤血球を盛んにつくって補おうとしている状態で、出血や、赤血球が壊される溶血が原因のことが多い。

非再生性貧血は、骨髄での赤血球づくりそのものが低下している状態で、慢性腎臓病による腎性貧血(エリスロポエチンの不足)などが含まれる。

原因はさまざまで、玉ねぎ・ネギ類の中毒による溶血、ノミの大量寄生による吸血、慢性的な出血なども貧血を起こす。

3免疫介在性の病気

免疫が誤って自分の体を攻撃する病気。免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は自分の赤血球を破壊して重い溶血性貧血を起こす。免疫介在性血小板減少症は血小板が壊され出血傾向を起こす。治療に免疫抑制薬を用いる。

免疫は本来、外から入った異物を攻撃するしくみだが、これが誤って自分自身の体を攻撃してしまうのが免疫介在性(自己免疫性)の病気である。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、免疫が自分の赤血球を異物とみなして破壊し、重い溶血性貧血を起こす病気で、急に進行することもある。

免疫介在性血小板減少症は、血小板が免疫によって壊され、点状出血などの出血傾向を起こす。

これらの治療には、過剰な免疫の働きを抑える免疫抑制薬(ステロイドなど)が用いられる。

免疫抑制薬を使っている間は感染しやすくなるため、衛生管理にも注意が必要である。

4止血・凝固の異常

血小板の減少や、凝固因子の異常で出血が止まりにくくなる。ワルファリン系の殺鼠剤はビタミンKの働きを妨げて出血を起こす(中毒)。重い病態では、全身で凝固と出血が同時に起こるDIC(播種性血管内凝固)もある。

出血を止めるしくみ(止血)には、血小板と、血液を固める凝固因子が関わる。

血小板が減ったり、凝固因子がうまく働かなかったりすると、出血が止まりにくくなる。

代表的な原因のひとつが、ワルファリンなどの殺鼠剤の誤食で、これらはビタミンKの働きを妨げて凝固因子をつくれなくし、時間がたってから重い出血を起こす(治療にはビタミンKを投与する)。

また、重症の感染症やショックなど全身が危機的な状態では、全身の血管の中で凝固と出血が同時に進行するDIC(播種性血管内凝固)という、命に関わる病態が起こることもある。

出血傾向のある動物では、採血部位の圧迫など、出血を増やさない配慮が必要である。

5猫のウイルス感染症(FIP・FeLV・FIV)

猫伝染性腹膜炎(FIP)はコロナウイルスが原因で、腹水・胸水がたまるウェット型と肉芽腫を形成するドライ型がある。猫白血病(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)はいずれもレトロウイルスで免疫を低下させ、二次感染や腫瘍のリスクを高める。

ネコには造血器・免疫に関わる重要なウイルス感染症が複数ある。

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスの変異によって起こる病気で、腹腔・胸腔に液体がたまるウェット型(滲出型)と、臓器に肉芽腫が形成されるドライ型(非滲出型)がある。

長らく予後不良とされてきたが、近年は抗ウイルス薬(GS-441524など)で回復できる例も増えている。

猫白血病ウイルス(FeLV)はレトロウイルスの一種で、唾液などを介した猫同士の接触によって感染する。

免疫抑制を起こし、リンパ腫などの腫瘍・貧血・二次感染のリスクを高める。

ワクチンによる予防と室内飼育が有効である。

猫免疫不全ウイルス(FIV)もレトロウイルスで、主に咬傷による血液を介して感染し、「猫のエイズ」とも呼ばれる。

免疫が低下することで様々な感染症にかかりやすくなるが、キャリア猫でも長期間元気に過ごせることが多い。

感染猫の取り扱いでは、他の猫への感染拡大を防ぐための隔離と衛生管理が重要である。

6血液寄生虫(ヘモプラズマ症・バベシア症)

ヘモプラズマ症はマイコプラズマの仲間が赤血球に寄生して溶血性貧血を起こし、ネコに多い。バベシア症は原虫がマダニを介して感染し、赤血球を破壊する重い溶血性貧血を起こし、イヌで多い。どちらも貧血・黄疸がみられる。

血液に寄生する病原体による病気もある。

ヘモプラズマ症(旧名:ヘモバルトネラ症)は、マイコプラズマの仲間(Mycoplasma haemofelis など)が赤血球の表面に寄生する感染症で、ネコで問題になることが多い。

ノミや吸血昆虫によって伝播し、免疫が低下しているネコ(FIV感染など)で重症化しやすい。

赤血球が破壊されて溶血性貧血が起こり、粘膜蒼白・黄疸・元気消失がみられる。

治療には抗菌薬(ドキシサイクリンなど)が用いられる。

バベシア症は、原虫(バベシア属)がマダニを介して感染し、赤血球に寄生してこれを破壊する病気で、イヌで多い。

急性の重い溶血性貧血が起こり、血色素尿(溶血した赤血球の成分が尿に出て赤茶色になる)・黄疸・高熱などがみられ、命に関わることがある。

マダニ予防(ノミ・マダニ駆除薬の定期的な使用)がバベシア症の最大の予防策である。

7検査と看護(輸血を含む)

血球計算(CBC)・血液塗抹・ヘマトクリット、凝固検査などで評価する。重度の貧血では輸血が行われ、血液型の確認や交差適合試験が重要(とくにネコは初回でも不適合輸血が危険)。安静・出血管理・免疫抑制薬の管理も看護の役割。

血液・免疫の病気では、血球計算(CBC)で赤血球・白血球・血小板の数を、血液塗抹で細胞の形を調べ、ヘマトクリット(PCV)で貧血の程度を確認する。

出血傾向では、凝固の検査も行う。

重度の貧血では、輸血が必要になることがある。

輸血では、血液型の確認や、ドナーとレシピエントの血液が合うかを調べる交差適合試験が重要で、とくにネコは初回の輸血でも血液型が合わないと重い反応を起こすため注意する。

看護では、貧血の動物の安静と酸素の確保、出血傾向の動物での出血を増やさない配慮、免疫抑制薬を使う動物での感染予防と投薬管理などを行う。

粘膜の色や元気・出血の有無を継続して観察することが大切である。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト