消化器トラブル(嘔吐・下痢・便秘)

嘔吐・下痢・便秘は、イヌ・ネコの診療でとても多い症状である。嘔吐と吐出の違い、小腸性と大腸性の下痢の見分け、便秘、そして脱水や緊急のサイン、家庭でのケアと看護のポイントまでを、図ではなく文章で読んで理解する。

1嘔吐の基礎(嘔吐と吐出のちがい)

嘔吐は前兆(吐き気・よだれ)があり腹部に力を入れて吐く。吐出は前兆なくコロッと出る食道由来のもの。原因は食べ過ぎ・異物・中毒・感染から全身の病気まで幅広く、回数・内容・タイミングの観察が大切。

嘔吐・下痢・便秘の3症状について、本文の原因・見分け方・観察上の注意点を症状ごとのカードに整理した。

胃の内容物などを吐く嘔吐は、消化器の代表的な症状である。

よく似た現象に吐出(食道からの逆流)があり、両者は区別して考える。

嘔吐は、吐き気やよだれといった前兆があり、おなかに力を入れて『えずく』ように吐くのが特徴である。

一方、吐出は前兆がなく、食べた物が消化されないままコロッと出てくるもので、食道の問題(巨大食道症など)を疑う手がかりになる。

嘔吐の原因は、食べ過ぎ・異物・中毒・感染症から、腎臓・肝臓・膵臓など全身の病気まで幅広い。

吐いた回数、吐いた物の内容(食べ物・液体・血や胆汁の混入)、食事との時間関係などを観察することが、原因を探る手がかりになる。

2下痢の基礎(小腸性と大腸性)

下痢は、小腸性(量が多くやせやすい)と大腸性(少量を何度も・粘液・しぶり・鮮血)に大別すると考えやすい。原因は食事・感染・寄生虫・ストレス・全身疾患など。脱水に注意する。

下痢は、便の水分が増えてゆるくなった状態で、これも非常に多い症状である。

下痢は、起こっている場所からおおまかに小腸性と大腸性に分けて考えると整理しやすい。

小腸性の下痢は、一回の量が多く、体重が減りやすい傾向がある。

大腸性の下痢は、少量の便を何度も出そうとし、粘液が混じったり、いきんでもなかなか出ない(しぶり)、鮮やかな赤い血が混じったりすることがある。

原因は、食事の変化や食べ過ぎ、感染症、寄生虫、ストレス、全身の病気などさまざまである。

下痢では体の水分が失われやすいため、脱水に注意して観察する。

3便秘

便秘は便が出にくい・硬い状態で、高齢のネコや巨大結腸症などでみられる。水分不足・運動不足・毛球・異物などが関わる。強くいきむのに出ない・元気食欲低下が続くときは受診。

便秘は、便が出にくい、出ても硬くて少ないといった状態である。

特に高齢のネコで多く、便がたまって腸が広がる巨大結腸症などが背景にあることもある。

水分の不足や運動不足、毛づくろいで飲み込んだ毛(毛球)、異物などが関わることがある。

トイレで何度もいきんでいるのに出ない様子は、便秘のほか、雄ネコの尿道閉塞(尿が出ない緊急事態)と見分けにくいことがあるため注意する。

便が数日出ない、強くいきむのに出ない、元気や食欲の低下を伴うといった場合は、受診が必要である。

4脱水と緊急のサイン

嘔吐・下痢が続くと脱水になる(皮膚の戻りが遅い・歯ぐきが乾く・元気消失)。子犬子猫や高齢は重篤化しやすい。血便・繰り返す嘔吐・ぐったり・腹部の急な膨満・異物誤食の疑いは緊急。

嘔吐や下痢が続くと、体から水分と電解質が失われて脱水になる。

脱水のサインには、皮膚をつまんで離したときの戻りが遅い、歯ぐきが乾いてねばつく、目がくぼむ、元気がなくなるなどがある。

とくに体力の少ない子犬・子猫や高齢の動物は、短時間で重篤になりやすいため注意が必要である。

次のような場合は緊急性が高く、早急な受診が必要である。

血の混じった便や黒いタール状の便、何度も繰り返す嘔吐、ぐったりして反応が鈍い、おなかが急に張ってくる(胃拡張胃捻転の疑い)、何度も吐こうとするのに吐けない、異物を飲み込んだ疑いがある、などである。

5家庭でのケアと看護

獣医師の指示のもとで絶食や少量頻回・消化に良い食事を行い、水分摂取に配慮する。症状(回数・性状・写真)を記録し、誤食を防ぐ。人用の下痢止め・吐き気止めを自己判断で与えない。

軽い消化器症状では、獣医師の指示のもとで食事を調整することがある。

一時的に食事を控えたり、消化のよい食事を少量ずつ何回かに分けて与えたりして、消化管を休ませる。

脱水を防ぐため、水分がとれるように配慮するが、飲んですぐ吐く場合などは受診して指示を仰ぐ。

嘔吐・下痢の回数や便・吐物の性状(色・血の有無)を記録し、可能なら写真に残しておくと、診察の助けになる。

人用の下痢止めや吐き気止めなどを自己判断で与えるのは危険なので避ける。

また、異物の誤食を防ぐ環境づくりや、飼い主への観察ポイントの説明も看護の役割である。