猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルス(FCoV)が体内で突然変異して起こる、従来は発症するとほぼ100%致死的とされてきた重い病気。腸にふつうにいるFCoVが変異してFIPウイルスになるしくみ、腹水・胸水がたまる滲出型(ウェット)と臓器に肉芽腫ができる非滲出型(ドライ)、そして近年の抗ウイルス薬による治療の進歩を、図ではなく文章で読んで学ぶ。

1FIPとは

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルス(FCoV)が体内で突然変異して起こる病気。従来は発症するとほぼ100%致死的とされてきた重い感染症だが、近年は抗ウイルス薬による治療で救命できる例が増えている。

猫コロナウイルス(FCoV)が体内で突然変異してFIPを発症する流れを示す。従来は進行性でほぼ100%致死とされたが、近年は抗ウイルス薬で救命できる例が増えている。

猫伝染性腹膜炎(FIP:Feline Infectious Peritonitis)は、猫コロナウイルス(FCoV)が関わる、猫の重い感染症である。

発症すると進行性で、従来は発症するとほぼ100%が死に至るとされてきた、予後の非常に悪い病気である。

ただし近年は、猫コロナウイルスに対する抗ウイルス薬(GS-441524やその関連薬など)が登場し、適切に治療すれば救命できる例が増えてきている。

若齢の猫や、多頭飼育・保護施設など猫が密集する環境で問題になりやすい。

2FCoVの突然変異で発症する

猫コロナウイルス(FCoV)は、猫の腸管にふつうにいるありふれたウイルスで、多くは無症状か軽い下痢程度。これが体内で突然変異して病原性の高いFIPウイルスになると、FIPを発症する。ストレス・免疫の低下・年齢などが関わるが、発症のしくみはまだ完全には解明されていない。

FIPのもとになる猫コロナウイルス(FCoV)は、もともと猫の腸管に比較的ふつうにいる、ありふれたウイルスである。

腸にいる状態(猫腸コロナウイルス)では、多くの猫で無症状か、軽い下痢を起こす程度で、大きな問題にはならない。

ところが、このFCoVが、感染した猫の体内で突然変異を起こし、病原性の高いウイルス(FIPウイルス)に変わると、FIPを発症する。

発症には、ストレス、免疫の低下、年齢(若齢に多い)などが関わると考えられているが、なぜ変異・発症するのかというしくみは、まだ完全には解明されていない。

FCoV自体は猫から猫へうつるが、『FIPそのものが猫から猫へ直接うつる』わけではなく、各個体の体内での変異・発症がかぎになる点が特徴である。

3滲出型(ウェットタイプ)

滲出型(ウェットタイプ/産出性)は、おなかや胸に水がたまる病型。腹水(おなかが膨れる)や胸水(呼吸が苦しくなる)がたまる。進行が速く、診断から数日〜数か月で亡くなることが多いとされてきた。

FIPは、症状の現れ方によっていくつかの病型に分けられる。

滲出型(ウェットタイプ/産出性)は、血管から水分(滲出液)がしみ出して、おなかや胸に水がたまるタイプである。

腹水がたまるとおなかが膨れ、胸水がたまると肺が圧迫されて呼吸が苦しくなる。

滲出型は進行が速いことが多く、無治療では診断から数日〜数か月で亡くなることが多いとされてきた、とくに急性・重篤な病型である。

4非滲出型(ドライタイプ)と混合型

非滲出型(ドライタイプ/非産出型)は、水はたまらず、全身のさまざまな臓器に肉芽腫(炎症のかたまり)ができる病型。肉芽腫ができた場所により、眼の症状・神経症状・消化器症状など多彩な症状が出る。両方の特徴をもつ混合型もある。

非滲出型(ドライタイプ/非産出型)は、滲出型のように水がたまらず、全身のさまざまな臓器に肉芽腫(炎症によるかたまり)が形成されるタイプである。

肉芽腫ができた場所によって症状はさまざまで、眼の症状(ぶどう膜炎など)、神経症状(ふらつき・けいれんなど)、消化器症状などが現れる。

ドライタイプは、ウェットタイプに比べると進行がゆっくりなこともあるが、診断が難しいことが多い。

また、滲出型と非滲出型の両方の特徴をあわせもつ混合型もある。

『ウェット=水がたまる、ドライ=肉芽腫ができる』と整理して覚えるとよい。

5診断・治療・看護

FIPは診断が難しく、症状・血液検査・貯留液の検査・画像・PCRなどを組み合わせて総合的に判断する。従来は対症療法が中心で予後不良だったが、近年は猫コロナウイルスに対する抗ウイルス薬で救命できる例が増えた。多頭飼育ではFCoVの感染圧やストレスを下げる管理も大切。

FIPは、これといった単独で確定できる検査が少なく、診断が難しい病気である。

発熱・元気食欲低下などの症状、血液検査(アルブミン低下・グロブリン上昇など)、貯留した腹水・胸水の性状の検査、画像検査、PCRによるウイルス検査などを組み合わせて、総合的に判断する。

治療は、従来は炎症を抑える・水を抜くなどの対症療法が中心で、予後はきわめて悪かった。

しかし近年は、猫コロナウイルスに対する抗ウイルス薬(GS-441524やその関連薬など)が使えるようになり、適切に治療すれば救命できる例が大きく増えている。

看護では、呼吸状態(胸水)や腹部の張り(腹水)、食欲・元気の観察、投薬の管理が重要である。

また、多頭飼育やシェルターでは、FCoVの感染圧を下げる衛生管理(トイレの清掃・分離)や、ストレスを減らす環境づくりが、発症予防の面で大切になる。

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