内分泌の病気(各論)

ホルモンの過不足で起こる内分泌の病気を学ぶ。内分泌疾患に共通するサイン、糖尿病、甲状腺の病気、副腎の病気、そして検査と看護のポイントを、図ではなく文章で読んで理解する。多くはゆっくり進み、全身にさまざまな症状を起こす。

1内分泌疾患のサイン

ホルモンの異常はゆっくり進み、多飲多尿、体重の増減、食欲の変化、被毛・皮膚の異常、活動性の変化など全身にさまざまな症状を起こす。とくに多飲多尿は糖尿病・クッシングなど複数の内分泌疾患に共通するサイン。

内分泌腺ごとに、ホルモンが過剰になる機能亢進と不足する機能低下、そのとき起こる代表的な病気を整理した表。甲状腺機能亢進症/低下症、クッシング症候群/アジソン病、糖尿病、尿崩症を対比して確認できる。

内分泌の病気は、ホルモンが多すぎたり少なすぎたりすることで起こり、全身にじわじわと影響する。

そのため症状もゆっくり進み、はっきりした不調として気づかれにくいことがある。

共通してみられるサインには、水をたくさん飲んで尿が増える多飲多尿、体重の増加または減少、食欲の増減、被毛が薄くなる・皮膚の異常、元気や活動性の変化などがある。

とくに多飲多尿は、糖尿病・クッシング症候群・腎臓病など複数の病気に共通するサインで、見つけたら原因を調べる手がかりになる。

飲水量や体重、食欲、被毛の変化を日頃から観察しておくことが早期発見につながる。

2糖尿病

インスリンの不足や効きにくさで血糖が下がらなくなる病気。多飲多尿・よく食べるのに体重が減る、などがサイン。治療はインスリン注射と食事管理が中心で、低血糖(震え・ぐったり・けいれん)に注意する。

糖尿病は、血糖を下げる唯一のホルモンであるインスリンが不足したり効きにくくなったりして、血糖が高いままになる病気である。

イヌ・ネコともにみられ、肥満などが関わることもある。

高血糖により、多飲多尿、よく食べるのに体重が減る、元気がないといった症状が出る。

治療は、多くの場合インスリンの注射と、血糖の急な変動を抑える食事管理が中心になる。

注意すべき合併症として、インスリンが効きすぎたときなどに起こる低血糖がある。

低血糖では、震え・ふらつき・ぐったり・けいれんなどがみられ、命に関わるため、サインを知っておくことが大切である。

3甲状腺の病気

ネコでは高齢で甲状腺機能亢進症が多く、代謝が過剰になって痩せる・よく食べる・活発すぎる・頻脈などがみられる。イヌでは甲状腺機能低下症が多く、代謝が落ちて元気がない・太る・脱毛・寒がりなどがみられる。

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節するため、その過不足は代謝の異常として現れる。

ネコでは、高齢で甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症が多い。

代謝が過剰になり、よく食べるのに痩せる、落ち着きがなく活発すぎる、心拍が速い(頻脈)、毛づやが悪いなどの症状が出る。

一方イヌでは、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症が多い。

代謝が落ちて、元気がない・動きたがらない、体重が増える、左右対称の脱毛、寒がるといった症状がみられる。

ネコは亢進、イヌは低下が多いという傾向を押さえておく。

4副腎の病気

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は副腎皮質ホルモンの過剰で、多飲多尿・腹部膨満・左右対称の脱毛などがみられ、イヌに多い。逆に不足するアジソン病(副腎皮質機能低下症)は元気消失・嘔吐などで、急性の危機(副腎クリーゼ)に陥ることもある。

副腎の皮質からは、コルチゾールなどのホルモンが分泌される。

このホルモンが過剰になるのがクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)で、イヌに多い。

多飲多尿、おなかが膨れる(腹部膨満)、左右対称の脱毛、皮膚が薄くなる、食欲が増すといった症状がみられる。

逆に、副腎皮質ホルモンが不足するのがアジソン病(副腎皮質機能低下症)である。

元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢など、はっきりしない症状でゆっくり進むことが多いが、急に悪化して血圧や血糖が下がり、ショック状態(副腎クリーゼ)に陥る危険もある。

クッシングとアジソンは、ホルモンの過剰と不足で症状がほぼ逆になる。

5尿崩症(ADH不足・反応不全)

尿崩症は抗利尿ホルモン(ADH)の分泌不足(中枢性)または腎臓でのADH反応不全(腎性)により、希薄な尿が大量に出て激しい多飲多尿が起こる。脱水が急速に進むリスクがあり、飲水を制限してはいけない。

尿崩症は、尿の量を調節する抗利尿ホルモン(ADH・バソプレシン)が不足するか、腎臓がADHに反応できなくなることで起こる内分泌疾患である。

ADHは通常、体内の水分が不足したときに腎臓に働きかけて水を再吸収させ、尿を濃くするホルモンである。

ADHが欠乏または効かないと、薄い尿が大量に出続け(多尿)、その分水をたくさん飲む(多飲)という激しい多飲多尿が起こる。

原因が脳(下垂体・視床下部)の病変にありADHが作られない場合を中枢性尿崩症、ADHは分泌されるが腎臓が反応しない場合を腎性尿崩症という。

多飲多尿は糖尿病やクッシングとも共通するサインであり、尿の比重(薄さ)や刺激試験で鑑別する。

大量に飲水できない状況では脱水が急速に進むため、入院中なども飲水を適切に確保することが重要である。

中枢性にはADHを補充するデスモプレシン点鼻薬・点眼薬などが治療に用いられる。

6検査と看護

血液検査(血糖・各ホルモン値)や、ホルモンの刺激・抑制試験で診断する。看護では、糖尿病のインスリン管理(保管・正確な投与・血糖測定)、投薬・食事管理、低血糖など急変への備え、そして飼い主への在宅管理の指導が重要。

内分泌の病気は、血液検査でホルモンの値や血糖を調べて診断する。

ホルモンの病気では、薬で刺激したり抑えたりして反応を見る刺激試験・抑制試験が行われることもある。

看護で特に重要なのが糖尿病の管理である。

インスリンは適切に保管し(多くは冷蔵)、決められた量を正確に注射する必要があり、血糖値の測定(血糖曲線)も行う。

低血糖などの急変に備え、対応の仕方を知っておく。

そのほかの内分泌疾患でも、投薬や食事の管理、症状の観察が大切である。

これらの病気は生涯にわたる管理が必要なことが多く、飼い主が自宅でインスリン注射や投薬を続けられるよう、分かりやすく指導することが看護師の重要な役割である。

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