図解で学ぶ
臨床動物学

外部寄生虫の分類と形態(シラミ・ハジラミ・ダニ類)

寄生虫は、体表にすむ外部寄生虫と、体内にすむ内部寄生虫(消化管などの蠕虫=条虫・吸虫・線虫と、原虫)に分けられる。外部寄生虫は、昆虫綱(脚3対=6本)のシラミ・ハジラミ・ノミと、クモ綱(成虫の脚4対=8本)のダニ類に分けられる。シラミは吸血性で頭部の幅が胸部より狭く、ハジラミは咀嚼性(皮膚や羽毛のかけらを食べる)で頭部の幅が胸部より広い。ダニは幼虫のとき脚が3対、脱皮して若虫・成虫になると4対になる。各種ダニ(マダニ・ヒゼンダニ・ミミヒゼンダニ・ニキビダニ・ツメダニ・イエダニ)には形態や寄生部位の特徴があり、マダニはSFTS・クリミア コンゴ出血熱・日本紅斑熱など重要な感染症を媒介する。

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1寄生虫の分類(外部寄生虫と内部寄生虫)

要点寄生虫は、体表にすむ『外部寄生虫』と、体内にすむ『内部寄生虫』に大別される。外部寄生虫はシラミ・ハジラミ・ノミ(昆虫)やダニ類。内部寄生虫は、消化管などにすむ蠕虫(条虫・吸虫・線虫)と、単細胞の原虫(コクシジウム・ジアルジア・トキソプラズマ・クリプトスポリジウムなど)に分けられる。

外部寄生虫は脚の数で大別できる。昆虫綱(シラミ・ハジラミ・ノミ)は脚3対=6本、クモ綱のダニ類(マダニ・ヒゼンダニなど)は成虫で脚4対=8本となる。

寄生虫は、すむ場所によって大きく2つに分けられる。

【外部寄生虫】体の表面(皮膚・被毛・外耳道など)にすむ寄生虫。

シラミ・ハジラミ・ノミなどの昆虫と、マダニ・ヒゼンダニなどのダニ類がある。

【内部寄生虫】体の中(消化管・血液・心臓など)にすむ寄生虫。

さらに次のように分けられる。

・蠕虫(ぜんちゅう)… からだが細長い・平たい多細胞の寄生虫で、条虫(サナダムシ)・吸虫・線虫(回虫・鉤虫など)がある。

・原虫(げんちゅう)… 単細胞の寄生虫で、コクシジウム・ジアルジア・トリコモナス・赤痢アメーバ・トキソプラズマ・クリプトスポリジウムなどがある。

この章では、外部寄生虫のうち、昆虫(シラミ・ハジラミ)とダニ類の見分け方・特徴を中心に学ぶ。

2シラミとハジラミの区別

要点シラミ・ハジラミはどちらも昆虫の外部寄生虫。見分けるポイントは『頭部の幅と胸部の幅の関係』と『口の形』。シラミは吸血性で、頭部の幅が胸部より『狭い』。ハジラミは咀嚼性(皮膚や羽毛のかけらを食べる)で、頭部の幅が胸部より『広い』。

シラミとハジラミは、どちらも昆虫(昆虫綱)の外部寄生虫で形が似ているが、次の点で区別できる。

【頭部と胸部の幅】・シラミ … 頭部の幅が胸部の幅より『狭い(小さい)』。

・ハジラミ … 頭部の幅が胸部の幅より『広い(大きい)』。

【口の形・食べ方】・シラミ … 口が吸うのに適した形で、皮膚から血を吸う『吸血性』。

・ハジラミ … 口が噛むのに適した形(咀嚼型)で、皮膚のかけらや羽毛などを食べる『咀嚼性』。

犬につくイヌハジラミは、頭部が大きく、脚に爪をもつのが特徴とされる。

『頭が胸より広い=ハジラミ(咀嚼)、頭が胸より狭い=シラミ(吸血)』と整理して覚える。

3ダニ類の基礎(クモ綱・脚の数)

要点ダニ・マダニは昆虫ではなく『クモ綱』の節足動物。昆虫(シラミ・ハジラミ・ノミ)の脚が3対(6本)なのに対し、ダニの成虫の脚は4対(8本)。ただしダニは、卵からかえった『幼虫』のときは脚が3対(6本)で、脱皮して若虫・成虫になると4対(8本)になる。

マダニや各種ダニは、見た目は虫だが『昆虫』ではなく、クモやサソリと同じ『クモ綱』の節足動物である。

脚の数が、昆虫とダニを見分ける大きな手がかりになる。

・昆虫(シラミ・ハジラミ・ノミ)… 脚は3対(6本)。

・ダニ類の成虫 … 脚は4対(8本)。

ただし注意点として、ダニは『幼虫(卵からかえった最初の時期)』のときは脚が3対(6本)しかなく、その後『脱皮』して若虫・成虫になると脚が4対(8本)になる。

つまり『ダニの幼虫は3対、脱皮後(若虫・成虫)は4対』である。

脚の数だけで判断するときは、ダニの幼虫と昆虫を混同しないよう注意する。

4各種ダニの特徴

要点ダニにはそれぞれ特徴がある。マダニ=大型で吸血し感染症を媒介。ヒゼンダニ(疥癬)=ずんぐりした体で角質にもぐり激しいかゆみ。ミミヒゼンダニ=脚が長く外耳道に寄生(犬・猫・フェレット)。ニキビダニ(毛包虫)=細長い体で毛包にすむ。ツメダニ=大きな爪(鉤)をもつ。イエダニ=吸血する。

代表的なダニの形態・寄生部位の特徴を整理する(皮膚の3つのダニの病気の詳細は別レッスン参照)。

・マダニ … 大型で、皮膚に咬みついて吸血する。

SFTSやバベシアなど多くの感染症を媒介する。

・ヒゼンダニ(疥癬/センコウヒゼンダニ)… 小さくずんぐりした丸い体で、皮膚の角質層にトンネルを掘って寄生し、非常に激しいかゆみを起こす(人獣共通)。

・ミミヒゼンダニ(耳ヒゼンダニ・耳ダニ)… 脚が長く比較的大きめで、犬・猫・フェレットなどの外耳道に寄生し、黒い耳垢の外耳炎を起こす。

・ニキビダニ(毛包虫・アカラス)… 細長い(葉巻のような)体で、毛包(毛穴の奥)にすむ。

健康な皮膚にも少数が常在する。

・ツメダニ … 大きな爪(鉤づめ状の触肢)をもつのが名前の由来。

フケのような症状(歩くフケ)を起こす。

・イエダニ … おもにネズミに寄生し、吸血する。

人を刺すこともある。

(ミミヒゼンダニは犬・猫・フェレットに感染しやすい点も押さえる。

)

5ダニが媒介する感染症

要点マダニは多くの感染症を媒介する。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、クリミア・コンゴ出血熱、日本紅斑熱(リケッチア)、バベシア症、ライム病など(ツツガムシ病はマダニではなく、別のダニであるツツガムシが媒介する)。マダニ予防が感染症予防につながる。

ダニ(特にマダニ)は、咬んで吸血する際にさまざまな病原体を媒介する。

【ウイルス】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、クリミア・コンゴ出血熱(一類感染症)。

【リケッチア】日本紅斑熱(マダニ媒介)、ツツガムシ病(ツツガムシというダニの一種が媒介)。

【原虫】バベシア症(赤血球に寄生して溶血性貧血)。

【細菌(スピロヘータ)】ライム病。

これらは、ダニにかまれることで動物やヒトに感染する。

動物医療では、SFTSに感染した猫・犬にかまれてヒトが感染した例も報告されており、マダニの予防駆除と、ダニを見つけたときの適切な取り扱い(無理に引き抜かない等)が重要になる。

芋づる表

外部寄生虫の分類と形態

要点昆虫(シラミ・ハジラミ・ノミ)は脚3対、ダニはクモ綱で成虫の脚4対(幼虫は3対)。シラミは頭が胸より狭く吸血、ハジラミは頭が胸より広く咀嚼。

隠して覚える(?を押すとめくれる)
空欄の表を印刷(紙に書く用)

昆虫(脚3対)

シラミ
昆虫・脚3対(6本)
頭部の幅が胸部より狭い。吸血性
ハジラミ
昆虫・脚3対(6本)
頭部の幅が胸部より広い。咀嚼性(皮膚のかけら・羽毛を食べる)
ノミ
昆虫・脚3対(6本)
かゆみ・ノミアレルギー。瓜実条虫を媒介

ダニ類(成虫の脚4対)

マダニ
クモ綱・成虫は脚4対 幼虫は脚3対
大型で皮膚に咬みついて吸血。SFTS・バベシアなどを媒介
ヒゼンダニ(疥癬)
クモ綱・成虫は脚4対
ずんぐり丸い体。角質層にトンネルを掘り激しいかゆみ(人獣共通)
ミミヒゼンダニ
クモ綱・成虫は脚4対
脚が長い。外耳道に寄生し黒い耳垢の外耳炎(犬・猫・フェレット)
ニキビダニ(毛包虫)
クモ綱・成虫は脚4対
細長い葉巻のような体。毛包にすむ。健康な皮膚にも少数いる
ツメダニ
クモ綱・成虫は脚4対
大きな爪(鉤づめ状の触肢)が名前の由来。フケのような症状(歩くフケ)
イエダニ
クモ綱・成虫は脚4対
おもにネズミに寄生して吸血。人を刺すこともある
理解できたら腕試し
確認問題 10問をとく