犬パラインフルエンザ・犬コロナウイルス感染症

犬パラインフルエンザウイルスは、一本鎖RNAウイルスで、咳を主症状とする呼吸器感染症(ケンネルコフの一因)。飛沫で広がり、他の病原体との混合感染で重症化する。犬コロナウイルスは、一本鎖RNAウイルスで、接触感染により消化管で増えて腸炎を起こす。単独では軽いことが多いが、犬パルボウイルスと一緒に感染すると重篤化する。両者の特徴を学ぶ。

1犬パラインフルエンザウイルス感染症

犬パラインフルエンザウイルスは一本鎖RNAウイルスで、おもに咳・くしゃみ・鼻水・発熱などの呼吸器症状を起こす。感染犬の咳・くしゃみによる飛沫(接触・飛沫)で広がる。単独では軽いことが多いが、しつこい咳が特徴。

犬パラインフルエンザ(呼吸器・ケンネルコフの一因)と犬コロナウイルス(消化器・軽度の腸炎)の病原体・標的・主症状の対比。両者とも一本鎖RNAウイルスだが、感染する部位と主症状が異なる。

犬パラインフルエンザウイルスは、一本鎖RNAをもつウイルスで、犬の呼吸器(気道)に感染する。

おもな症状は、咳、くしゃみ、鼻水、発熱などの上部気道症状で、とくにがんこ(しつこい)な咳が特徴である。

あまり重症になることは多くないが、子犬やワクチン未接種の犬がかかりやすい。

感染経路は、感染した犬の咳・くしゃみに含まれるウイルスによる飛沫感染(接触・飛沫)で、犬どうしが接する場所(ペットショップ・施設・ドッグランなど)で広がりやすい。

犬パラインフルエンザウイルスは、犬のコアワクチン関連の混合ワクチンに含まれており、予防の対象となる重要な感染症である。

2ケンネルコフと混合感染

犬パラインフルエンザウイルスは、犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)の主要な原因の一つ。ケンネルコフは、複数の病原体(パラインフルエンザ・犬アデノウイルス2型・ボルデテラなど)の混合感染で起こることが多く、混合感染では重症化しやすい。

犬パラインフルエンザウイルスを中心とした、伝染性の呼吸器症候群(しつこい咳を主症状とする伝染性の気管・気管支炎)を『ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)』という。

ケンネルコフは、1つの病原体だけでなく、複数の病原体の混合感染で起こることが多い。

犬パラインフルエンザウイルスに加え、犬アデノウイルス2型などのウイルスや、ボルデテラ(細菌)などが一緒に関わる。

単独感染なら軽いことが多いが、これらが同時に感染(混合感染)すると、症状が重くなり、こじれて肺炎になることもある。

そのため、咳をする犬が複数いる環境では、ほかの犬にうつさないよう隔離し、ワクチンで予防することが大切である。

(ケンネルコフ関連のワクチンには、パラインフルエンザ・アデノウイルス2型・ボルデテラなどが含まれる。

3犬コロナウイルス感染症(腸炎)

犬コロナウイルス(腸コロナ)は一本鎖RNAウイルスで、おもに接触(経口)感染で広がり、消化管でウイルスが増えて腸炎(下痢・嘔吐)を起こす。成犬では軽い、または無症状のことも多いが、子犬では下痢・脱水に注意。

犬コロナウイルス感染症(犬腸コロナウイルス感染症)は、一本鎖RNAをもつ犬コロナウイルスによる消化器の感染症である。

感染経路は、ウイルスに汚染された便などを介した接触(経口)感染で、消化管に入ったウイルスが腸の細胞で増殖して腸炎を起こす。

症状は下痢・嘔吐などである。

単独感染では、成犬は軽症や無症状のことも多いが、子犬では下痢による脱水に注意が必要である。

(なお、ここでいう犬コロナウイルスは腸炎を起こすウイルスで、猫のFIPを起こす猫コロナウイルスや、人の新型コロナウイルスとは別のウイルスである。

)犬コロナウイルスも、混合ワクチンに含まれることがある(ノンコア扱い)。

4犬パルボウイルスとの混合感染による重篤化

犬コロナウイルス単独では軽いことが多いが、犬パルボウイルスと同時に感染すると、腸の障害が強まって重篤化する。とくに子犬では、激しい下痢・嘔吐・脱水で命に関わる。混合感染への警戒が重要。

犬コロナウイルスで覚えておきたい重要な点が、犬パルボウイルスとの混合感染である。

犬コロナウイルスは単独なら比較的軽いことが多いが、犬パルボウイルス(重い出血性の腸炎を起こす、子犬で致死率の高いウイルス)と同時に感染すると、お互いに腸の障害を強め合って、症状が大きく重篤化する。

とくに子犬では、激しい下痢・嘔吐・血便・脱水を起こし、命に関わることがある。

このように、ウイルス感染症では『1種類でも、複数が重なる(混合感染)と重症化する』ことがあるため、混合感染への警戒が重要である。

予防として、犬パルボウイルスはコアワクチンの対象であり、確実な予防が子犬を守るうえで欠かせない。

5消毒・予防と動物看護

予防はワクチンと、感染犬の隔離・環境消毒。消毒薬は、エンベロープをもつウイルス(パラインフルエンザ・コロナ)には次亜塩素酸ナトリウム・アルコール・ポビドンヨード・グルタルアルデヒドなどが有効。看護では、隔離・呼吸/消化器症状の観察・脱水への輸液・院内感染対策が大切。

これらの感染症の予防は、ワクチン接種と、感染犬を広げない管理(隔離・消毒)が基本である。

消毒について、犬パラインフルエンザウイルスや犬コロナウイルスはエンベロープ(脂質の膜)をもつエンベロープウイルスで、消毒薬が比較的効きやすい。

次亜塩素酸ナトリウム(塩素系)、アルコール(消毒用エタノール)、ポビドンヨード、グルタルアルデヒドなどで不活化できる。

(一方、エンベロープをもたない犬パルボウイルスは消毒薬が効きにくく、環境中でも非常にしぶといため、確実な消毒には次亜塩素酸ナトリウムなどが必要である点も、あわせて押さえておくとよい。

)動物看護では、咳や下痢のある犬を他の犬から隔離し、ケージ・器具・手指を消毒して院内感染を防ぐ。

呼吸器症状(咳・呼吸状態)や消化器症状(下痢・嘔吐・便の状態)を観察し、脱水には輸液で対応する。

子犬では重症化しやすいため、とくに注意深く観察する。

飼い主には、ワクチンの重要性、咳や下痢のある犬を他の犬に近づけないことなどを伝える。

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