犬ジステンパー(CDV)

犬ジステンパーウイルス(CDV)は、パラミクソウイルス科の一本鎖RNAウイルスで、感染力がきわめて高い。接触・飛沫(空気)で広がり、とくに若い犬(子犬)で致死率が高い。発熱・結膜炎・鼻汁・咳・嘔吐・下痢などに加え、進行すると間質性肺炎や二次性の気管支肺炎、けいれんなどの神経症状を起こす。コアワクチンで予防すべき重要な感染症。病態・予防・消毒を学ぶ。

1犬ジステンパーウイルス(CDV)とは

犬ジステンパーウイルス(CDV)は、パラミクソウイルス科(モルビリウイルス属)の一本鎖RNAウイルスで、エンベロープをもつ。感染力がきわめて高く、犬の重大な感染症。歴史的に、ニホンオオカミの絶滅の一因になったとも言われる。

犬ジステンパーウイルス(CDV)はパラミクソウイルス科(モルビリウイルス属=麻疹の仲間)の一本鎖RNAウイルスで、エンベロープをもち、感染力がきわめて高い。犬・タヌキ・キツネ・フェレットなど多くの食肉類に感染し、予防はコアワクチンが基本となる。

犬ジステンパーは、犬ジステンパーウイルス(CDV)による全身性の感染症で、感染力がきわめて高く、死亡率も高い重大な病気である。

CDVは、パラミクソウイルス科(モルビリウイルス属=麻疹ウイルスの仲間)に属する、一本鎖RNAをもつウイルスで、表面にエンベロープ(脂質の膜)をもつ。

犬のほか、タヌキ・キツネ・フェレットなど多くの食肉類が感染し、野生動物にも広がる。

歴史的には、ニホンオオカミの絶滅の一因になったのではないかとも言われている。

ワクチン(犬のコアワクチン)が普及して発生は減ったが、ワクチン未接種の子犬などでは今も発生があり、かかると重症化・死亡しやすいため、油断できない感染症である。

ポイントは、『CDV=パラミクソウイルス科の一本鎖RNAウイルス(エンベロープあり)で、感染力が非常に高い』ということである。

2感染経路と子犬での高い致死率

おもな感染経路は、感染犬の咳・くしゃみなどによる飛沫(空気)感染と、鼻汁・唾液・涙・尿・便などの分泌物・排泄物との接触感染。とくに免疫の弱い若い犬(子犬)で発症しやすく、致死率が高い。

犬ジステンパーのおもな感染経路は2つである。

1つは、感染した犬の咳・くしゃみに含まれるウイルスによる飛沫感染(空気感染)である。

感染力が非常に強く、犬どうしが接する場所で容易に広がる。

もう1つは、鼻汁・唾液・涙といった分泌物や、尿・便などの排泄物に含まれるウイルスとの直接接触による接触感染である。

とくに、まだ免疫が十分でない若い犬(子犬)や、ワクチンを受けていない犬で発症しやすく、急性期には致死率が高い。

母犬からの移行抗体が切れる時期の子犬は感染の危険が高いため、計画的なワクチン接種で守ることが重要である。

3全身の症状(呼吸器・消化器・眼)

ウイルスが全身に広がると、発熱(しばしば二相性・不定期)、結膜炎・眼脂・鼻汁、激しい咳、嘔吐・下痢などが現れる。悪化すると、ウイルスによる間質性肺炎や、二次性細菌感染による気管支肺炎を起こす。

犬ジステンパーでは、ウイルスが全身に広がるにつれて、さまざまな臓器の症状が現れる。

発熱がみられ、しばしば一度下がってまた上がる(二相性)など、不定期の発熱を示す。

眼・鼻の症状として、結膜炎・眼脂(目やに)・鼻汁が出る。

呼吸器の症状として、激しい咳が出る。

消化器の症状として、嘔吐や下痢(ときに血便)がみられる。

悪化すると、ウイルスそのものによる間質性肺炎を起こし、さらに弱った気道に二次的な細菌感染が加わって気管支肺炎(細菌性肺炎)になることがある。

このように、犬ジステンパーは呼吸器・消化器・眼など全身に症状が出るのが特徴である。

そして、ジステンパーで特に問題になるのが、次に述べる神経症状である。

4神経症状

ウイルスが神経系(脳)に達すると、非化膿性脳炎を起こし、けいれん・ふるえ(ミオクローヌス)・麻痺・歩行異常などの神経症状が現れる。神経症状は回復後に遅れて出ることもあり、後遺症が残ることもある。鼻や肉球が硬くなる『ハードパッド』もみられる。

犬ジステンパーが恐れられる大きな理由が、神経症状である。

ウイルスが神経系(脳)に達すると、化膿を伴わない脳炎(非化膿性脳炎)を起こし、脳の白質の神経線維をおおう髄鞘(ずいしょう)が傷ついて脱髄が起こる。

その結果、けいれん(てんかん様発作)、体の一部がリズミカルにふるえるミオクローヌス、麻痺、歩行のふらつき、行動の異常などの神経症状が現れる。

神経症状は、呼吸器・消化器症状から回復したあとに、遅れて現れることもあり、いったん出ると治りにくく、後遺症(ミオクローヌスなど)が残ることもある。

また、鼻先や足の裏(肉球)の皮膚が硬く厚くなる『ハードパッド(硬蹠症)』も、ジステンパーに特徴的な所見として知られる。

神経症状が出ると予後(回復の見込み)はよくないことが多く、それだけに発症させない予防が重要である。

5治療・消毒・予防

ジステンパーに特効薬はなく、治療は対症療法が中心。二次性細菌感染には抗菌薬、脱水には輸液、神経症状には抗けいれん薬などを用いる。CDVはエンベロープをもつため消毒薬が効きやすく、次亜塩素酸ナトリウム・消毒用エタノール・グルタルアルデヒドなどで不活化できる。予防はコアワクチン。

犬ジステンパーには、ウイルスを直接やっつける特効薬がないため、治療は症状をやわらげる対症療法が中心になる。

二次性の細菌感染(気管支肺炎など)には抗菌薬(抗生物質)、脱水・栄養不良には輸液・栄養管理、神経症状(けいれん)には抗けいれん薬などを用い、全身状態を支える。

消毒について、CDVはエンベロープ(脂質の膜)をもつエンベロープウイルスなので、消毒薬が比較的効きやすい。

次亜塩素酸ナトリウム(塩素系)、消毒用エタノール(アルコール)、グルタルアルデヒド、過酸化物系(漂白系)などで不活化できる。

最も重要なのは予防である。

犬ジステンパーは犬のコアワクチンの対象であり、子犬期から計画的にワクチンを接種して、確実に免疫をつけることが、この重い病気から犬を守る基本となる。

動物看護では、感染犬の隔離・環境消毒で院内感染を防ぎ、呼吸・消化器・神経症状や全身状態を観察し、対症療法を支える。

飼い主にはワクチンの重要性を伝える。

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