消化器の病気(各論)

イヌ・ネコの消化器の病気を、食道・胃腸・肝臓・膵臓といった臓器ごとに学ぶ。食道炎・巨大食道症・腸閉塞・腸捻転・腸重積・巨大結腸症・GDV・肝臓・胆道・膵臓の病気まで、出題基準の代表疾患を文章で読んで理解する。

1食道の病気

食道炎は食道粘膜の炎症で吐出・嚥下困難が起こる。巨大食道症は食道が拡張して内容物が胃に届かず吐出する。食道狭窄では固形物が通りにくくなる。「嘔吐」と「吐出」の区別が重要。

消化管(食道→胃→腸)と付属臓器(肝臓・胆道・膵臓)の部位別に、本文で扱う代表的な消化器疾患を整理した。★は外科・救急対応が必要な緊急疾患を示す。

食道の病気は、嘔吐と混同されやすい「吐出(はきだし)」が特徴的なサインである。

嘔吐は胃から力を入れて吐き出す動作だが、吐出は食道内の内容物が逆流して、力まずに口から出てくるもので、食べた直後や食後しばらくして未消化のものが出る。

食道炎は、胃酸の逆流・誤嚥・異物・薬物刺激などで食道粘膜が炎症を起こす病気で、吐出・嚥下困難・よだれ・食べることを嫌がるなどのサインがある。

巨大食道症(食道拡張症)は、食道の蠕動運動が低下して食道が袋状に大きく広がる病気で、食べ物が胃まで届かず逆流・吐出を繰り返す。

吸引性肺炎を合併しやすく、危険である。

先天性と後天性(重症筋無力症・アジソン病などに続発)がある。

食道狭窄は、食道の一部が狭くなって食べ物が通りにくくなる状態で、異物・炎症・手術後の瘢痕などが原因となる。

固形物は通らないが液体は通る、という症状が特徴的なことがある。

治療は原因に応じて内科治療(食道炎)、バルーン拡張(狭窄)、食事管理(巨大食道症では高い台での給餌・流動食)などが行われる。

2胃腸の病気・腸の緊急疾患

急性胃腸炎・IBD・消化管異物閉塞に加え、腸捻転・腸重積・巨大結腸症・直腸脱・会陰ヘルニアも出題基準の対象。腸捻転は急性の激しい腹痛・ショックを起こす外科緊急。パルボウイルス感染症は致死的な出血性腸炎を引き起こす。

胃や腸の病気は、嘔吐や下痢といった症状で気づかれることが多い。

急性胃腸炎は、食事・ストレス・感染などで急に嘔吐・下痢を起こすものである。

炎症性腸疾患(IBD)は腸に慢性的な炎症が続く病気で、繰り返す嘔吐・下痢・体重減少がみられる。

食事反応性(FRD)・抗菌薬反応性(ARD)・蛋白喪失性腸症(PLE)・腸リンパ管拡張症などのタイプがある。

消化管内異物は、おもちゃや骨などを飲み込んで腸が詰まる腸閉塞を起こし、強い嘔吐・腹痛・元気消失の緊急疾患となる。

ネコではひも状異物(線状異物)が腸を傷つけ特に危険。

腸捻転は腸がねじれる緊急疾患で、急激な激しい腹痛・嘔吐・ショックを起こし、外科手術が必要。

腸重積は腸が腸の中に入り込む状態で、子犬・子猫に多く嘔吐・粘血便が出る。

巨大結腸症は結腸が拡張して便が排出できなくなる病気で、ネコに多い。

何度もいきむのに便が出ない・腹部膨満がサイン。

直腸脱は直腸が肛門から脱出する状態で、下痢・便秘・排便時のいきみが原因になる。

会陰ヘルニアは骨盤底筋が弱くなり直腸や膀胱が会陰部に落ち込むもので、未去勢の中高齢雄犬に多い。

犬パルボウイルス感染症は、未ワクチン・免疫未発達の子犬に多く、激しい出血性下痢・嘔吐・白血球減少・高い死亡率が特徴の緊急疾患である。

隔離と輸液・対症療法が中心となる。

3胃拡張胃捻転症候群(GDV)

胃が拡張してねじれる緊急疾患。胸の深い大型犬に多く、空えずき・腹部膨満・ショックが主なサイン。胃捻転では胃壁の虚血から心室性期外収縮(VPC)・心室頻拍(VT)などの重篤な不整脈を合併するため、心電図モニタリングが必須。予防に分割給餌・予防的胃固定術。

胃拡張胃捻転症候群(GDV)は、胃がガスや内容物で大きく膨らみ、さらにねじれてしまう、命に関わる緊急疾患である。

胸の深い大型犬(グレートデン・ジャーマンシェパードなど)に多く、一度に大量に食べた後すぐの激しい運動などが誘因とされる。

おなかが急に張ってくる、吐こうとするのに何も出ない(空えずき)、よだれ、落ち着かず苦しむといった様子がサインで、急速に進行してショックに陥る。

胃がねじれると胃壁や脾臓の血流が障害され、組織の虚血・壊死が起こる。

この虚血が心臓に影響し、心室性期外収縮(VPC)や心室頻拍(VT)などの重篤な不整脈を合併することが多い。

GDVでは手術後も含めて心電図モニタリングを継続し、不整脈が出現した場合はリドカインなどの抗不整脈薬で対処する。

治療は胃のガス抜き(胃チューブ・胃穿刺)と緊急手術(胃の整復・胃固定術)が基本で、輸液による循環管理も並行して行う。

予防として、食事を複数回に分ける、早食いや食後すぐの激しい運動を避ける、再発予防に予防的胃固定術を行うなどがある。

4肝臓・胆道の病気

肝炎、ネコの肝リピドーシス(脂肪肝・食欲不振が引き金、肥満ネコに多い)、胆泥・胆石・胆嚢の病気、生まれつき肝臓を通らない血管がある門脈シャントなど。黄疸(粘膜が黄色い)は重要なサイン。

肝臓は、栄養の処理・解毒・胆汁の生成など多くの働きをもち、その病気は全身に影響する。

肝炎など肝臓の炎症や障害では、元気・食欲の低下、嘔吐、黄疸などがみられる。

ネコでは、何らかの理由で食欲不振が続くと肝臓に脂肪がたまる肝リピドーシス(脂肪肝)を起こしやすく、とくに太ったネコで問題になる。

胆汁の通り道(胆道)では、胆泥や胆石、胆嚢の病気が起こることがある。

黄疸(白目や歯ぐき・皮膚が黄色くなる)は、肝臓・胆道の病気や溶血の重要なサインである。

また、生まれつき血液が肝臓を通らずに流れてしまう門脈シャントでは、解毒がうまくいかず神経症状などが出ることがある。

5膵臓の病気

急性膵炎(嘔吐・腹痛・元気食欲低下、高脂肪の食事などが誘因)、消化酵素を十分に出せず消化不良・脂肪便・やせがみられる膵外分泌不全(EPI)などがある。膵臓は消化と血糖(インスリン)の両方に関わる臓器。

膵臓は、消化酵素を出す働き(外分泌)と、血糖を調節するホルモンを出す働き(内分泌)の両方をもつ臓器である。

急性膵炎は、膵臓に炎症が起こる病気で、嘔吐・腹痛・元気や食欲の低下がみられ、重症化すると命に関わる。

高脂肪の食事の摂取などが誘因になることがある。

膵外分泌不全(EPI)は、消化酵素を十分に分泌できなくなる病気で、食べても消化・吸収がうまくいかず、よく食べるのにやせる、脂肪分の多い便(脂肪便)が出るといった症状がみられる。

なお、膵臓のインスリンを出す働きが障害されると糖尿病になる(内分泌の病気とも関わる)。

6検査と看護

身体検査・腹部触診、血液検査(肝酵素・膵特異的リパーゼなど)、X線・超音波で評価する。看護では、絶食や消化に配慮した食事療法、輸液による脱水・栄養の管理、嘔吐下痢のケアと観察、異物誤食の予防指導が中心になる。

消化器の病気では、身体検査やおなかを触る触診で痛みや異常を確認する。

血液検査では、肝臓の酵素(ALT・ALPなど)や膵臓の指標(膵特異的リパーゼ)、黄疸の指標(ビリルビン)などを調べる。

X線や超音波で、異物や臓器の状態、閉塞の有無などを評価する。

看護では、消化管を休ませる絶食や、消化のよい食事・療法食による食事療法を、獣医師の指示に沿って行う。

嘔吐や下痢で脱水・栄養不足になりやすいため、輸液による管理も重要である。

嘔吐・下痢・食欲の様子をよく観察・記録し、異物の誤食を防ぐ環境づくりを飼い主に伝えることも看護の役割である。

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