犬の代表的な皮膚炎(膿皮症・マラセチア・アトピー)

犬の皮膚表面には多くの常在菌がすみ、最も多いのはブドウ球菌。皮膚のバリアが弱まる(アレルギー・基礎疾患)、高温多湿などをきっかけに、これらが増えて皮膚炎を起こす。表在性膿皮症はグラム陽性球菌のブドウ球菌による細菌性皮膚炎で、腹部・背部などにかゆみが出て、クロルヘキシジン系の殺菌シャンプーを使う。マラセチア性皮膚炎は常在する酵母様真菌マラセチア(出芽でだるま型)による脂漏性の皮膚炎で、耳・口周り・首下・脇・内股・指間などに赤み・べたつき・においが出て、夏や梅雨に悪化。ミコナゾール+クロルヘキシジン配合シャンプー(マラセブ)を使う。アトピー性皮膚炎はIgEが関わるI型アレルギーで、ダニ・ハウスダスト・食物などが原因。柴犬・シーズー・ウエスティなどに好発し、顔・耳・足・腹にかゆみが出て、治療が難しく管理が中心。

1皮膚の常在菌と皮膚炎が起こるしくみ

犬の皮膚表面には、もともと多くの細菌(常在菌)がすんでおり、最も多いのはブドウ球菌。皮膚のバリアが弱まる(アレルギー性皮膚炎など)、ほかの病気で体調が悪い、高温多湿といったきっかけがあると、常在菌や常在真菌が増えて皮膚炎を起こす。

犬で多い3つの皮膚炎を、原因・好発部位・特徴・治療で対比した。膿皮症=細菌(ブドウ球菌)、マラセチア性皮膚炎=真菌(酵母様)、アトピー性皮膚炎=I型アレルギー(IgE)と、原因の系統がそれぞれ異なる。

健康な犬の皮膚の表面にも、もともとさまざまな細菌(常在菌)がすんでいる。

そのなかで最も多いのが『ブドウ球菌』である。

ふだんはバランスが保たれているが、次のようなきっかけでこのバランスが崩れると、常在菌や常在する真菌(マラセチア)が増えすぎて皮膚炎を起こす。

・アレルギー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱っている。

・ほかの病気で体調・免疫が落ちている。

・高い気温や湿度(高温多湿)で皮膚がむれている。

つまり皮膚炎の多くは、もともといる菌・真菌が『増えやすい状況』になって起こる。

だから治療では、菌を抑えるだけでなく、背景にある原因(アレルギーなど)やスキンケアも合わせて考えることが大切になる。

2表在性膿皮症(細菌性・ブドウ球菌)

表在性膿皮症は、皮膚常在菌のブドウ球菌(グラム陽性の球菌)が増えて起こる細菌性の皮膚炎。腹部・背部などに比較的強いかゆみ・赤み・発疹・かさぶたが出る。治療には抗菌薬とともに、クロルヘキシジン系などの殺菌性の薬用シャンプーを用いる。

表在性膿皮症は、皮膚の表面近く(表皮付近)で、常在菌のブドウ球菌が増えて起こる細菌性の皮膚炎である。

原因菌のブドウ球菌は『グラム陽性の球菌』で、犬の皮膚の常在菌として最も多い。

アレルギーや基礎疾患、高温多湿などをきっかけに増殖する。

症状は、お腹(腹部)や背中などに、比較的強いかゆみ・赤み・発疹(丘疹・膿疱)・かさぶた・脱毛などが現れる。

治療には、原因菌を抑える抗菌薬とともに、皮膚の菌を減らす『殺菌性の薬用シャンプー(クロルヘキシジン系など)』を用いたスキンケアが重要になる。

背景にアレルギーなどがあれば、その管理も合わせて行う。

3マラセチア性皮膚炎(真菌)

マラセチア性皮膚炎は、皮膚に常在する酵母様真菌『マラセチア』(出芽でだるま/雪だるまのような形)が増えて起こる脂漏性(脂っぽい)の皮膚炎。耳・口周り・首の下・脇・内股・指の間など皮脂がたまる部位に、赤み・べたつき・においが出る。高温多湿の夏や梅雨に悪化しやすい。

マラセチア性皮膚炎は、皮膚に常在する『マラセチア』という酵母様真菌(カビの一種)が増えて起こる皮膚炎である。

マラセチアは出芽で増えるため、ひょうたん(だるま/雪だるま)のような形に見えるのが特徴。

脂漏性(皮膚が脂っぽくなる)の皮膚炎で、皮脂がたまりやすい部位——耳、口の周り、首の下、脇の下、内股、指の間、肛門周囲など——に多い。

症状は、皮膚が赤くベタベタし、特有のにおいが強くなり、色素沈着や皮膚の厚く硬くなる変化(苔癬化)が見られることもある。

強いかゆみを伴う。

マラセチアは湿気と皮脂を好むため、高温多湿の『夏』や『梅雨』に悪化しやすい。

治療では、抗真菌成分のシャンプーが中心で、背景にあるアレルギーや脂漏体質などの管理(食事を含むスキンケア)も大切になる(次のセクション参照)。

4アトピー性皮膚炎(I型アレルギー)

アトピー性皮膚炎はIgEが関わるI型アレルギーで、ダニ(ハウスダストマイト)・ハウスダスト・花粉・食物などのアレルゲンに反応して起こる。柴犬・シーズー・ウエスト ハイランド ホワイト テリアなどに好発し、顔・耳・足先・お腹などに強いかゆみが出る。完治は難しく、かゆみの管理・スキンケア・アレルゲン回避など『つき合っていく』治療が中心。

アトピー性皮膚炎は、IgE抗体が関わる『I型アレルギー(即時型)』を背景に起こる、慢性のかゆい皮膚病である。

原因となるアレルゲンには、ダニ(ハウスダストマイト)・ハウスダスト・花粉・食物などがある。

好発犬種として、柴犬、シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティ)、フレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバーなどが知られる。

症状は、顔(目・口・耳のまわり)、耳、足先、お腹、脇、内股など、決まった部位に強いかゆみと炎症が出るのが特徴で、多くは若齢で発症する。

アトピー性皮膚炎は治療が難しく、完全に治す(アレルギーをなくす)ことは難しいため、かゆみを抑える薬・スキンケア・アレルゲンをできるだけ避ける環境管理などで『長くつき合っていく』管理が中心になる。

細菌(膿皮症)やマラセチアの感染を合併しやすく、その治療も合わせて行う。

5薬用シャンプーと看護(成分の使い分け)

薬用シャンプーは皮膚炎ケアの柱。細菌性(膿皮症)にはクロルヘキシジン系などの殺菌シャンプー、マラセチア(真菌)にはミコナゾール+クロルヘキシジン配合シャンプー(マラセブなど)を用いる。十分に泡を皮膚に作用させ(数分置く)、すすぎ残しを防ぐ。背景のアレルギー管理・環境管理・飼い主指導も看護の役割。

皮膚炎の治療・管理では、薬用シャンプーによるスキンケアが大きな柱になる。

原因に合わせて成分を選ぶ。

【細菌性(膿皮症)】クロルヘキシジン系などの『殺菌性』の薬用シャンプーを用いる。

【マラセチア(真菌)】抗真菌成分の『ミコナゾール』と『クロルヘキシジン』を配合した薬用シャンプー(マラセブなど)を用いる。

薬用シャンプーは、泡を皮膚にしっかりつけて数分置いてから洗い流す(接触時間を確保する)こと、すすぎ残しを防ぐことがポイントになる。

また、アトピー性皮膚炎やマラセチア・膿皮症の多くは背景にアレルギーや脂漏体質があるため、かゆみ止めの投薬補助、食事を含む環境管理、ノミ・ダニ予防、引っかき防止(エリザベスカラー)、そして『続けることの大切さ』を飼い主に説明する飼い主指導が、看護の重要な役割になる。

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