クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

コルチゾールが過剰になって起こるクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)を学ぶ。視床下部→下垂体→副腎というホルモンの指令の流れ(CRH→ACTH→コルチゾール)、副腎皮質の3層と髄質が出すホルモン、多飲多尿・ポットベリー・左右対称性脱毛などの症状、そして下垂体性(PDH)・副腎性(ADH)・医原性という原因別の分類を、図ではなく文章で読んで理解する。

1視床下部-下垂体-副腎軸(CRH→ACTH→コルチゾール)

コルチゾールは、視床下部からCRH→下垂体前葉からACTH→副腎皮質からコルチゾール、という指令の流れ(HPA軸)で調節される。コルチゾールが増えると上流のCRH・ACTHが抑えられる(ネガティブフィードバック)。この流れのどこが原因かでクッシングの型が分かれる。

コルチゾールは視床下部(CRH)→下垂体前葉(ACTH)→副腎皮質という指令の流れ(HPA軸)で調節され、増えすぎると上流を抑えるネガティブフィードバックが働く。この流れのどこかの異常でコルチゾールが過剰になった状態がクッシング症候群で、原因の場所によって型が分かれる。

副腎皮質から出るコルチゾール(糖質コルチコイド)は、上位の脳からの指令で量が調節されている。

まず視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が出て、それを受けて下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌される。

ACTHが副腎皮質を刺激することで、コルチゾールが分泌される。

この『視床下部→下垂体→副腎』という一連の流れを視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)という。

コルチゾールが十分に増えると、その情報が視床下部・下垂体に伝わってCRHやACTHの分泌が抑えられる(ネガティブフィードバック)ことで、量がちょうどよく保たれる。

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、このどこかに異常が起きてコルチゾールが過剰になった状態であり、どこが原因かによって型が分かれる。

2副腎のホルモン(皮質の3層と髄質)

副腎は外側の皮質と内側の髄質に分かれる。皮質は3層——球状帯=鉱質コルチコイド(アルドステロン)、束状帯=糖質コルチコイド(コルチゾール)、網状帯=副腎アンドロゲン(性ホルモン)。髄質はカテコラミン(心拍数の増加・細動脈の収縮など)を出す。

副腎は、外側の皮質と内側の髄質に分かれ、それぞれ違うホルモンを出す。

副腎皮質は3つの層からなり、外側から順に役割が決まっている。

球状帯からは、塩分と水分のバランスを調節する鉱質コルチコイドが出て、その中心がアルドステロンである。

束状帯からは、代謝やストレスへの対応にかかわる糖質コルチコイドが出て、その中心がコルチゾールである。

網状帯からは、副腎アンドロゲンなどの性ホルモンが分泌される。

一方、副腎髄質からはカテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)が分泌され、心拍数の増加や細動脈の収縮などの『戦闘モード』の反応を起こす。

クッシング症候群で過剰になるのは、このうち束状帯から出る糖質コルチコイド(コルチゾール)である。

3クッシング症候群の症状

コルチゾール過剰により、多飲多尿・多食、腹部が膨れるポットベリー(腹部膨満)、左右対称性の脱毛、皮膚が薄くなる・石灰沈着、パンティング(荒い呼吸)、肝腫大、筋力・活動性の低下、精巣萎縮、高血圧などがみられる。尿が薄くなり尿比重も低下する。

クッシング症候群では、コルチゾールが過剰になることで全身にさまざまな症状が現れる。

代表的なのは、水をたくさん飲んで尿が増える多飲多尿で、尿が薄くなって尿比重も低下する。

食欲が増す(多食)一方で、おなかが膨れるポットベリー(腹部膨満)がみられる。

皮膚や被毛では、左右対称性の脱毛、皮膚が薄くなる(菲薄化)、皮膚への石灰の沈着(石灰沈着症)などが起こる。

そのほか、ハアハアと荒い呼吸をするパンティング、肝臓が腫れる肝腫大、筋力の低下、活動性の低下、精巣萎縮、高血圧などもみられる。

これらはゆっくり進むことが多く、加齢のせいと見過ごされやすいため、複数のサインを合わせて気づくことが大切である。

4クッシングの分類(下垂体性・副腎性・医原性)

クッシングは原因で3つに分かれる。①下垂体性(PDH)=下垂体の腫瘍がACTHを出しすぎ両側の副腎を刺激する。イヌ・ネコともに最も多く約80〜90%を占める。②副腎性(ADH)=下垂体は正常だが、副腎自体が腫瘍化してコルチゾールを過剰に出す。③医原性=ステロイド薬の長期・過剰投与による。

クッシング症候群は、コルチゾール過剰の原因がどこにあるかによって3つに分類される。

1つめは下垂体性(PDH)で、下垂体が腫瘍化してACTHを過剰に分泌し、その刺激で両側の副腎皮質が過形成を起こしてコルチゾールを出しすぎる型である。

イヌ・ネコともに最も多く、クッシング全体の約80〜90%を占める。

2つめは副腎性(ADH)で、下垂体は正常にもかかわらず、副腎そのものが腫瘍化して、上からの指令と関係なくコルチゾールを過剰に分泌してしまう型である。

3つめは医原性で、ほかの病気の治療のためにステロイド薬(コルチゾールと同じ働きをもつ)を長期間・過剰に投与したことで、クッシングと同じ状態になるものである。

下垂体性と副腎性は『指令を出す側(下垂体)の問題か、受ける側(副腎)の問題か』で区別すると整理しやすい。

5医原性クッシングの注意点と、その他の副腎腫瘍

医原性クッシングのもとになるステロイドは、急にやめると体が自前のコルチゾールを出せず、副腎皮質機能低下症(アジソン病・副腎クリーゼ)に陥る危険があるため、必ず少しずつ減らす。副腎腫瘍ではコルチゾール以外に、アルドステロン(原発性アルドステロン症)・性ホルモン・カテコラミン(褐色細胞腫)を過剰に出すものもある。

医原性クッシングのもとになるステロイド薬には、扱いに重要な注意点がある。

ステロイドを長く使うと、体は『外から十分入ってくる』と判断して自前のコルチゾールを作るのをやめてしまう。

この状態で急に投与を中止すると、自前のコルチゾールがすぐには出せず、副腎皮質機能低下症(アジソン病)や、血圧・血糖が急低下する副腎クリーゼに陥る危険がある。

そのため、長期に使ったステロイドは、急にやめず必ず少しずつ減らして(漸減して)いく。

なお、副腎の腫瘍では、コルチゾール以外のホルモンを過剰に出すものもある。

アルドステロンを過剰に出す原発性アルドステロン症、性ホルモンを産生する副腎腫瘍、そして副腎髄質にできてカテコラミンを過剰分泌し興奮・高血圧・頻脈などを起こす褐色細胞腫などである。

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