細胞傷害性抗がん剤と副作用

抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)は、増殖の盛んながん細胞を攻撃するが、正常な増殖の速い細胞(骨髄・消化管など)も傷つけるため副作用が出る。ドキソルビシン・ビンクリスチン・シクロホスファミド・ロムスチン・プラチナ製剤・L-アスパラギナーゼなど、代表的な薬の用途と特徴的な副作用、そして猫に禁忌の薬(シスプラチン・5-FU)を整理する。

1化学療法の基礎と共通の副作用

細胞傷害性抗がん剤は、分裂の盛んな細胞を攻撃する。がん細胞だけでなく、正常でも増殖の速い細胞(骨髄・消化管粘膜・毛根など)も傷つけるため、骨髄抑制・消化器症状(嘔吐・下痢)・脱毛などの副作用が共通して出やすい。

細胞傷害性抗がん剤は分裂の盛んな細胞を攻撃するため、がん細胞に効く一方で、増殖の速い正常細胞(骨髄・消化管粘膜・毛根)も傷つき、骨髄抑制・消化器症状・脱毛が共通の副作用として現れる。

抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)による治療を化学療法という。

これらの薬は、細胞が分裂・増殖するしくみを邪魔して、増殖の盛んながん細胞を攻撃する。

ところが、体の中には正常でも増殖が速い細胞があり、これらも巻き添えで傷ついてしまう。

代表が、血球をつくる骨髄、消化管の粘膜、毛根などである。

そのため、多くの抗がん剤に共通する副作用として、骨髄抑制(白血球・血小板・赤血球が減り、感染・出血・貧血のリスク)、消化器症状(嘔吐・下痢・食欲不振)、脱毛などがある。

とくに骨髄抑制で白血球(好中球)が減ると感染症にかかりやすくなるため、投与後の血球数のチェックが重要である。

薬ごとに、共通の副作用に加えて、その薬に特徴的な副作用(後述)がある。

これを知っておくことが、安全な治療と看護につながる。

2ドキソルビシン(アドリアマイシン)

ドキソルビシン(商品名アドリアマイシン)は、リンパ腫・肉腫・乳腺腫瘍など幅広く使う代表的抗がん剤。特徴的な副作用は、犬では累積的な心毒性(心筋障害)、猫では腎毒性。血管外に漏れると重度の皮膚壊死を起こす(強い起壊死性)ため、確実な静脈内投与が必要。骨髄抑制・消化器症状もある。

ドキソルビシン(アドリアマイシン)は、悪性リンパ腫・各種肉腫・乳腺腫瘍など、幅広いがんに使われる代表的な抗がん剤である。

特徴的な副作用として、心臓への毒性(心毒性)がある。

とくに犬では、使うほどたまっていく累積的な心筋障害を起こすため、総投与量に上限が設けられている。

一方、猫ではむしろ腎臓への毒性(腎毒性)が問題になりやすい。

また、ドキソルビシンは血管の外に漏れ出ると(血管外漏出)、重度の皮膚・組織壊死を起こし、なかなか治らないことがある(強い起壊死性=ベシカント)。

そのため、確実に静脈内へ投与し、漏れがないよう細心の注意を払う。

そのほか、骨髄抑制や消化器症状もみられる。

(コリーやシェルティなど一部の犬種では薬剤の感受性が高く、より注意が必要である。

3ビンクリスチンとビンブラスチン

ビンクリスチン(オンコビン)は、リンパ腫・軟部組織肉腫などに使い、特徴的な副作用は便秘などの末梢神経毒性。血管外漏出で組織壊死を起こす。ビンブラスチンは肥満細胞腫・猫のリンパ腫などに使い、骨髄抑制が主な副作用。どちらも植物由来(ビンカアルカロイド)。

ビンクリスチンとビンブラスチンは、どちらも植物(ニチニチソウ)由来のビンカアルカロイドという仲間の抗がん剤である。

ビンクリスチン(商品名オンコビンなど)は、リンパ腫や軟部組織肉腫などに使われる。

特徴的な副作用は、末梢神経への毒性で、便秘(腸の動きの低下)などがみられる。

骨髄抑制は比較的軽い。

肝臓で代謝され、おもに胆汁中へ排泄される。

ビンクリスチンも、血管の外に漏れると組織壊死を起こす起壊死性の薬で、確実な静脈内投与が必要である。

ビンブラスチン(よく似た名前だが別の薬)は、肥満細胞腫や猫のリンパ腫などに使われ、主な副作用は骨髄抑制である。

名前が似ているが、『ビンクリスチン=末梢神経毒性(便秘)』『ビンブラスチン=骨髄抑制』と、特徴の違いを区別して覚えるとよい。

4シクロホスファミドとロムスチン(CCNU)

シクロホスファミド(エンドキサン)は、リンパ腫・白血病・肉腫に使うアルキル化薬で、特徴的な副作用は(無菌性)出血性膀胱炎——代謝産物アクロレインが膀胱を刺激する。ロムスチン(CCNU)は、リンパ腫・肥満細胞腫・脳腫瘍・組織球肉腫などに使い、強い(遅れて出る)骨髄抑制と肝毒性に注意。

シクロホスファミド(商品名エンドキサンなど)は、リンパ腫・白血病・軟部組織肉腫などに使われるアルキル化薬である。

特徴的な副作用が、出血性膀胱炎(無菌性出血性膀胱炎)である。

これは、体内で薬が分解されてできる『アクロレイン』という物質が膀胱の壁を刺激して炎症を起こすために生じる。

十分な水分・排尿をうながして膀胱にためないことが予防になる。

骨髄抑制や消化器症状もある。

ロムスチン(CCNU)は、リンパ腫・肥満細胞腫・脳腫瘍・組織球肉腫・皮膚型リンパ腫などに使われるアルキル化薬(ニトロソウレア)で、脳に届きやすいのが特徴である。

ロムスチンの注意すべき副作用は、強い骨髄抑制(とくに少し遅れて現れる)と、くり返し使ったときの肝毒性である。

アルキル化薬は、DNAを直接傷つけてがん細胞の分裂を止めるタイプの薬である。

5プラチナ製剤・L-アスパラギナーゼと猫の禁忌薬

シスプラチンは骨肉腫・中皮腫などに使うが腎毒性が強く、猫には禁忌(致死的な肺水腫を起こす)。カルボプラチンは骨肉腫などに使い、猫にも使え、主な副作用は骨髄抑制。L-アスパラギナーゼはリンパ腫・リンパ性白血病に使い、アレルギー(アナフィラキシー)に注意。5-FUも猫には禁忌(神経毒性)。

プラチナ(白金)製剤には、シスプラチンとカルボプラチンがある。

シスプラチンは、骨肉腫・中皮腫などに使われるが、腎毒性が強く、点滴での水分負荷が必要である。

そして重要なのが、シスプラチンは猫には禁忌だという点である。

猫に投与すると致死的な肺水腫を起こすため、使ってはいけない。

カルボプラチンは、骨肉腫・悪性黒色腫などに使われ、シスプラチンより腎毒性が少なく、猫にも使える。

主な副作用は骨髄抑制である。

L-アスパラギナーゼは、リンパ腫・リンパ性白血病に使われる薬で、特徴的な副作用はアレルギー反応(じんましん・嘔吐・血圧低下、重いとアナフィラキシー)である。

予防のため、投与前に抗ヒスタミン薬やステロイドを前投与することがある。

もう1つ、5-FU(フルオロウラシル)も猫には禁忌で、重い神経毒性(けいれんなど)を起こすため使えない。

『猫に禁忌=シスプラチン・5-FU』は、安全管理上とても重要なので必ず覚えておく。

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