条虫・吸虫の中間宿主と終宿主

条虫(さなだ虫)や吸虫は、卵から成虫になるまでに、ほかの動物(中間宿主)の体を経由する複雑な生活環をもつ。成虫がすむのが終宿主。瓜実条虫はノミ、マンソン裂頭条虫はケンミジンコ→カエル、日本海裂頭条虫はケンミジンコ→サケ・マス、エキノコックス(多包条虫)はキツネ・犬とノネズミ、横川吸虫はカワニナ→アユ——『どの寄生虫が、どの宿主を経るか』を整理する。

1中間宿主と終宿主の考え方

寄生虫が成虫になってすみつく動物を『終宿主』、成虫になる前の幼虫の時期を過ごす動物を『中間宿主』という。条虫・吸虫は、卵→幼虫→成虫の途中で中間宿主を経るため、その動物を食べることで終宿主が感染することが多い。

条虫・吸虫は卵→中間宿主で育つ幼虫→終宿主で成虫、という生活環をもつ。終宿主は幼虫をもつ中間宿主を口から食べて(捕食して)感染し、成虫が産んだ卵が便に出て循環がくり返される。

条虫(さなだ虫)や吸虫(フルーク)は、卵から成虫になるまでに、いくつかの動物の体を渡り歩く複雑な生活環(ライフサイクル)をもつ。

寄生虫が成虫になってすみつき、卵を産む動物を『終宿主(しゅくしゅ)』という。

犬・猫・人などが終宿主になる。

一方、成虫になる前の幼虫の時期を過ごす動物を『中間宿主』という。

中間宿主が2種類あるものでは、第一中間宿主・第二中間宿主と呼ぶ。

条虫・吸虫の多くは、中間宿主の体内で育った幼虫を、終宿主が口から食べる(捕食する)ことで感染する。

たとえば、ノミを飲み込む、感染した魚やカエルを食べる、といった経路である。

そのため、『どの寄生虫が、どんな中間宿主を経て、何を食べると終宿主にうつるか』を結びつけて覚えることが重要である。

また、これらの中には人にもうつる人獣共通感染症もあり、公衆衛生の面でも大切である。

2瓜実条虫(ノミが中間宿主)

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)は、犬・猫の腸にすむ平たい条虫(さなだ虫)で、片節がウリの種のような形をしている。中間宿主はノミ。動物がグルーミングなどでノミを飲み込むと感染する。駆虫にはプラジクアンテルを用い、ノミ対策が予防になる。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)は、犬・猫の腸管にすむ、平たくて節(片節)がつながった条虫(さなだ虫)である。

便や肛門のまわりに出てくる片節が、ウリ(瓜)の種のような形をしているのが名前の由来である。

瓜実条虫の中間宿主はノミ(やハジラミ)である。

ノミの幼虫が、便に出た瓜実条虫の卵を食べて中間宿主となり、その中で幼虫が育つ。

犬・猫は、毛づくろい(グルーミング)などのときに、この幼虫をもったノミを飲み込むことで感染する。

駆虫には、条虫に効くプラジクアンテルを用いる。

ノミがいると感染が成立するため、ノミの駆除・予防が、瓜実条虫の予防につながる。

『瓜実条虫=中間宿主はノミ』と覚える。

3マンソン裂頭条虫と日本海裂頭条虫(2つの中間宿主)

マンソン裂頭条虫は、第一中間宿主がケンミジンコ、第二中間宿主がカエル(ヘビ)。犬・猫がカエルなどを食べて感染する。日本海裂頭条虫は、第一中間宿主がケンミジンコ、第二中間宿主がサケ・マス。ヒトや犬が生のサケ・マスを食べて感染する(人獣共通)。

裂頭条虫のなかまは、2種類の中間宿主を経る生活環をもつ。

マンソン裂頭条虫は、卵が水中でかえり、第一中間宿主のケンミジンコ(小さな甲殻類)に食べられて育ち、それを第二中間宿主のカエル(やヘビ)が食べて、その筋肉などに幼虫がたまる。

犬・猫は、この感染したカエルなどを食べて感染し、腸で成虫になる。

治療にはプラジクアンテルを(通常より高用量で)用いる。

日本海裂頭条虫は、第一中間宿主がケンミジンコ、第二中間宿主がサケ・マス(サクラマスなど)である。

サケ・マスの筋肉に幼虫(プレロセルコイド)がいて、これを生で食べたヒト・クマ・イヌなどの終宿主の小腸で、長い成虫になる。

ヒトにも感染する人獣共通の寄生虫で、生のサケ・マスの摂取が原因になる。

『裂頭条虫=第一中間宿主はケンミジンコ。

第二中間宿主が、マンソンはカエル、日本海はサケ・マス』と整理する。

4多包条虫(エキノコックス)と猫条虫

多包条虫(エキノコックス)は、終宿主がキツネ・犬、中間宿主が野ネズミ(ノネズミ)。人にも感染して肝臓などに重い病気(エキノコックス症)を起こす重要な人獣共通寄生虫。猫条虫は、中間宿主がネズミ(齧歯類)、終宿主が猫。猫がネズミを食べて感染する。

多包条虫(エキノコックス)は、公衆衛生上とくに重要な条虫である。

終宿主はキツネ・犬で、これらの腸に成虫がすむ。

中間宿主は野ネズミ(ノネズミ)で、キツネや犬の便に出た卵を野ネズミが食べると、その肝臓などで幼虫が育つ。

キツネ・犬は、この感染した野ネズミを食べて感染する。

問題なのは、人がエキノコックスの卵を(汚染された手や水・食品から)誤って口にすると、人の肝臓などで幼虫が増えて、重い病気(エキノコックス症)を起こすことである。

北海道などで問題になる、注意すべき人獣共通寄生虫である。

猫条虫は、終宿主が猫(やキツネ)、中間宿主がネズミ(齧歯類)である。

ネズミの体内で育った幼虫を、猫がネズミを捕食することで感染し、猫の腸で成虫になる。

『エキノコックス=終宿主キツネ・犬/中間宿主ノネズミ(人にも感染し危険)』『猫条虫=中間宿主ネズミ/終宿主ネコ』と整理する。

5横川吸虫と予防・看護

横川吸虫は、ヒト・犬・猫の小腸にすむ小さな吸虫。第一中間宿主はカワニナ(巻貝)、第二中間宿主はアユ・シラウオ・ウグイなどの淡水魚。生の淡水魚を食べて感染する。これら寄生虫の予防は、ノミ対策・生の魚や肉を与えない・拾い食いを防ぐこと。

横川吸虫(よこかわきゅうちゅう)は、ヒト・犬・猫の小腸にすむ、ごく小さな吸虫である。

横川吸虫の第一中間宿主はカワニナ(巻貝)で、卵を貝が食べて体内で幼虫が育ち、水中へ出た幼虫が第二中間宿主のアユ・シラウオ・ウグイ・フナなどの淡水魚に侵入して、その体(うろこの下や筋肉)で幼虫(メタセルカリア)になる。

終宿主は、この感染した生の淡水魚を食べて感染する。

ここまでの寄生虫に共通する予防のポイントは、『中間宿主や、それを含むものを食べさせない』ことである。

具体的には、ノミ・ハジラミの駆除(瓜実条虫)、カエルや生の魚・肉を食べさせない・拾い食いをさせない(裂頭条虫・横川吸虫など)、野ネズミを捕食させない(猫条虫・エキノコックス)といった対策が有効である。

とくにエキノコックスは人に重い病気を起こすため、流行地では犬の定期駆虫や、手洗い・生水/山菜の扱いに注意することが重要である。

動物看護師は、便検査による寄生虫の確認、駆虫薬(プラジクアンテルなど)の投薬介助、生餌・拾い食いを避ける飼い主指導、人獣共通寄生虫への注意喚起などを通じて、予防を支える。

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