血液に寄生する病原体(バベシア・ヘモプラズマ・フィラリア)

血液に寄生する病原体には、原虫・細菌・線虫がある。バベシアは原虫で、マダニが媒介して赤血球の中に寄生・破壊し、急性の溶血性貧血・発熱・脾腫・血色素尿を起こす(犬に多い)。猫ヘモプラズマ症(旧ヘモバルトネラ症)は、赤血球表面に寄生するマイコプラズマの一種(細菌)が原因で溶血性貧血を起こす(猫に多い)。フィラリア(犬糸状虫)は線虫で、蚊が媒介し、成虫が肺動脈・右心に寄生して咳・運動不耐・腹水などを起こす(予防はマクロライド系の月1回投与)。これらは寄生する動物種が分かれており、病原体が特定の動物種にだけ寄生する性質を『宿主特異性』という。

1血液に寄生する病原体の全体像

血液に寄生する病原体は、病原体の種類で整理できる。原虫=バベシア(赤血球内)、細菌=ヘモプラズマ(赤血球表面、マイコプラズマの一種)、線虫=フィラリア(肺動脈・右心に成虫、血中にミクロフィラリア)。媒介する生き物も、バベシア=マダニ、フィラリア=蚊、と異なる。

血液に寄生する3病原体を、種類・媒介・寄生部位・主な障害で対比した表。バベシア(原虫・マダニ媒介・赤血球の中)、ヘモプラズマ(細菌・赤血球の表面)、フィラリア(線虫・蚊媒介・肺動脈や右心に成虫)の違いを整理している。

血液(赤血球や心臓・血管)に寄生する病原体には、いくつかの種類がある。

病原体の種類と寄生する場所、媒介する生き物をセットで整理すると覚えやすい。

・バベシア(原虫)… マダニが媒介し、赤血球の『中』に寄生して赤血球を破壊する。

・ヘモプラズマ(細菌=マイコプラズマの一種)… 赤血球の『表面』に寄生して溶血を起こす。

・フィラリア(線虫)… 蚊が媒介し、成虫が肺動脈や右心に寄生する。

血液中には子虫(ミクロフィラリア)がいる。

いずれも赤血球の破壊(溶血)や循環の障害を起こすため、貧血や元気消失などがみられる。

次の各セクションで個別に見ていく。

2バベシア症(原虫・マダニ媒介)

バベシアは原虫で、マダニが媒介する。赤血球の中に寄生して赤血球を破壊し、急性の重い溶血性貧血・発熱・脾腫・血色素尿(赤茶色の尿)を起こす。犬で多い。治療は抗バベシア薬(ジミナゼン・イミドカルブなど)。最大の予防はマダニの駆除・予防。

バベシア症は、原虫(バベシア属)による病気で、マダニが媒介する。

バベシアは赤血球の『中』に入り込んで寄生し、赤血球を破壊する。

その結果、急性の重い『溶血性貧血』が起こり、粘膜蒼白・発熱・元気消失がみられる。

破壊された赤血球の成分(ヘモグロビン)が尿に出て、尿が赤茶色になる『血色素尿』や、脾臓が腫れる『脾腫』もみられることが多い。

命に関わることがある。

犬で問題になることが多い。

治療には抗バベシア薬(ジミナゼン・イミドカルブなど)が用いられるが、再発しやすく、薬の安全域が狭いものもあるため注意が必要。

最大の予防は、ノミ・マダニ駆除薬の定期的な使用による『マダニの予防』である。

3猫ヘモプラズマ症(マイコプラズマの一種・細菌)

猫ヘモプラズマ症(旧・ヘモバルトネラ症)は、赤血球の表面に寄生する『マイコプラズマの一種(Mycoplasma haemofelis など)』という細菌が原因で、溶血性貧血を起こす。猫で多く、FIV感染などで免疫が落ちていると重症化しやすい。治療はドキシサイクリン(テトラサイクリン系)などの抗菌薬。

猫ヘモプラズマ症は、かつて『ヘモバルトネラ症』と呼ばれていた病気である。

以前はリケッチアの仲間と考えられていたが、遺伝子解析の結果、『マイコプラズマの一種(細菌)』であることが分かり、赤血球に寄生するマイコプラズマを『ヘモプラズマ』と呼ぶようになった。

ヘモプラズマ(Mycoplasma haemofelis など)は、赤血球の『表面』に付着して寄生し、その赤血球が破壊されて『溶血性貧血』を起こす。

粘膜蒼白・黄疸・元気消失がみられる。

猫で問題になることが多く、ノミや吸血昆虫によって伝播するとされる。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染などで免疫が低下している猫では重症化しやすい。

原虫ではなく『細菌(マイコプラズマ)』なので、治療にはドキシサイクリン(テトラサイクリン系)などの抗菌薬が用いられる。

4フィラリア症(線虫・蚊媒介)

フィラリア(犬糸状虫)は線虫で、蚊が媒介する。成虫が肺動脈や右心に寄生し、咳・運動を嫌がる・元気消失、進行すると腹水(右心不全)などを起こす。血液中には子虫(ミクロフィラリア)がいる。予防はマクロライド系(イベルメクチン・ミルベマイシン等)の月1回投与で、侵入した幼虫を駆除する。

フィラリア症(犬糸状虫症)は、線虫である犬糸状虫(Dirofilaria immitis)による病気で、『蚊』が媒介する。

蚊が吸血する際に子虫(ミクロフィラリア)が体内に入り、成長した成虫が『肺動脈』や『右心』に寄生する。

成虫が心臓・肺の血管に寄生するため、咳、運動を嫌がる(運動不耐)、元気・食欲の低下がみられ、進行すると右心不全による腹水や、急性の重い症状(大静脈症候群)を起こすこともある。

診断は、血液中のミクロフィラリアの検出や、成虫の抗原検査などで行う。

予防は、マクロライド系の予防薬(イベルメクチン・ミルベマイシンオキシムなど)を、蚊のいる時期に合わせて月1回投与し、体内に入った幼虫を駆除することが基本である(予防を怠った状態で成虫がいる犬に予防薬を与えると重い副反応が出ることがあるため、投与前の検査が重要)。

5宿主特異性と予防・看護

これらの病原体は寄生する動物種が分かれている(バベシア=主に犬、猫ヘモプラズマ=主に猫)。病原体が特定の動物種にだけ寄生する性質を『宿主特異性』という。共通する看護・予防は、媒介する節足動物(マダニ・蚊・ノミ)の対策、貧血の観察(粘膜色)、確実な予防薬投与と飼い主指導。

血液に寄生する病原体は、寄生する動物種が決まっていることが多い。

たとえばバベシア(Babesia gibsoni)は主に犬に、猫ヘモプラズマ(Mycoplasma haemofelis)は主に猫に寄生する。

このように、ある病原体が特定の動物種にだけ寄生・感染し、ほかの動物種にはほとんど寄生しない性質を『宿主特異性(しゅくしゅとくいせい)』という。

宿主特異性が高いほど、寄生できる相手が限られる。

これらの病気に共通する予防・看護のポイントは次のとおり。

・媒介する生き物の対策:バベシア・ヘモプラズマ=マダニ・ノミの駆除、フィラリア=蚊の時期の予防薬。

・貧血の観察:粘膜の色(蒼白・黄疸)、元気・食欲、尿の色(血色素尿)をチェックする。

・確実な予防:フィラリア予防薬は決められた間隔で確実に投与し、投与前の検査の必要性を飼い主に説明する。

・重症例では輸液・輸血などの支持療法を行う。

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