出血性疾患(止血異常)の分類と鑑別―一次・二次/先天・後天

出血が止まりにくい止血異常は、血小板やvWFが関わる『一次止血異常』と、凝固因子が関わる『二次止血異常』に大きく分けられ、それぞれに先天性と後天性がある。一次止血異常では点状出血・粘膜出血が、二次止血異常では深部の血腫・体腔出血が目立つ。一次止血異常の代表は先天性のフォン・ウィルブランド病(VWD)、後天性の免疫介在性血小板減少症(IMT)やマダニ媒介感染症(バベシア・アナプラズマ・エーリキア)。二次止血異常の代表は先天性の血友病(第VIII/IX因子欠乏)、後天性の殺鼠剤中毒(ビタミンK欠乏)・肝胆道疾患・DIC。鑑別は出血パターン・血小板数・PT・APTTを組み合わせて進める。

1止血異常の大きな分け方(一次・二次/出血パターン)

止血は『一次止血(血小板・血管・vWFが傷口に栓をつくる)』と『二次止血(凝固因子がフィブリンで補強する)』からなる。一次止血異常では点状出血・斑状出血・粘膜出血(鼻血・血尿など)が、二次止血異常では深部の血腫・関節内出血・体腔出血(胸腔・腹腔)が目立つ。出血の『見た目』が分類の手がかりになる。

止血異常は、血小板・vWF・血管が関わる一次止血異常と、凝固因子が関わる二次止血異常に分けられる。前者は点状出血など浅く広い出血、後者は血腫や体腔内出血など深く大きい出血が目立ち、いずれにも先天性・後天性がある。

出血を止めるしくみ(止血)は2段階からなる。

『一次止血』は、血管が傷つくとまず血小板が、フォン・ウィルブランド因子(vWF)を仲立ちにして傷口(露出したコラーゲン)に粘着・凝集し、血小板の栓をつくる段階である。

血管壁の状態も関わる。

『二次止血』は、続いて血漿の凝固因子が連鎖反応してフィブリンの網をつくり、血小板の栓を補強して丈夫な血餅にする段階である。

どちらが障害されるかで、出血の『見た目(パターン)』が変わるのが鑑別のポイントになる。

【一次止血異常の出血】皮膚・粘膜の点状出血(小さな赤い点)や斑状出血、鼻出血・血尿・歯肉出血など、浅く広い出血が特徴。

【二次止血異常の出血】皮下や筋肉の血腫、関節内出血、胸腔・腹腔などの体腔内出血、止血後の再出血など、深く大きな出血が特徴。

この一次/二次の軸に、それぞれ生まれつきの『先天性』と、後から生じる『後天性』があると整理すると、出血性疾患が見通しよく分類できる。

2一次止血異常①―先天性(フォン・ウィルブランド病など)

一次止血異常の先天性で最も代表的なのがフォン・ウィルブランド病(VWD)。vWFの不足・異常で血小板が傷口にうまく粘着できず出血する、イヌで最も多い遺伝性の出血性疾患(ドーベルマンなどに多い)。ほかに血小板無力症など血小板自体の機能異常(先天性)もある。

一次止血が生まれつきうまく働かない疾患の代表が『フォン・ウィルブランド病(VWD:von Willebrand disease)』である。

vWF(フォン・ウィルブランド因子)は、血小板を傷口のコラーゲンに粘着させる『のり』の役割と、第VIII因子を安定させる役割をもつ。

VWDではこのvWFが不足したり質的に異常だったりするため、血小板の数は正常でも傷口にうまく粘着できず、粘膜出血・鼻出血・手術時の止血困難などが起こる。

VWDはイヌで最も多い遺伝性の出血性疾患で、ドーベルマンなどの犬種に多いことが知られる。

このほか、血小板の数は足りているのに血小板そのものの働きが悪い『血小板機能異常(血小板無力症など)』の先天性のものも、一次止血異常に含まれる。

3一次止血異常②―後天性(血小板減少症・感染症・脾摘など)

後天性の一次止血異常は血小板の『数の減少』か『機能の低下』。代表は免疫介在性血小板減少症(IMT)。ほかにDICによる消費、マダニ媒介の感染症(バベシア・アナプラズマ・エーリキア)による血小板減少、薬剤による血小板機能異常、大量出血・大量輸液による希釈、脾臓の異常(脾腫・摘出の影響)など。

後天的に一次止血が障害される原因は、血小板の『数が減る(血小板減少症)』か『働きが落ちる(機能異常)』かに大別される。

【免疫介在性血小板減少症(IMT/IMTP)】免疫が誤って自分の血小板を破壊する自己免疫疾患で、後天性血小板減少症の代表。

点状出血・紫斑・鼻出血・血尿などを起こす。

【DIC(播種性血管内凝固)】全身で凝固が暴走し、血小板と凝固因子が消費されて減るため、出血傾向も生じる。

【感染症】マダニが媒介するバベシア症・アナプラズマ症・エーリキア症などは、血小板減少を起こす代表的な感染症。

【薬剤・中毒】一部の薬剤は血小板の機能を低下させる。

【希釈・喪失】大量出血や大量の輸液・輸血では、血小板が薄まったり失われたりして相対的に不足する。

【脾臓の関与】脾臓は血小板をためたり壊したりする臓器で、脾腫では血小板が脾臓に取り込まれて減ることがある(脾臓摘出が血小板数に影響することもある)。

4二次止血異常①―先天性(血友病)

二次止血異常の先天性の代表が血友病。血友病Aは第VIII因子の欠乏、血友病Bは第IX因子の欠乏で起こる。いずれもX染色体上の遺伝子異常による伴性(X連鎖)劣性遺伝で、基本的に雄に発症しやすい。深部出血・関節内出血・止血後の再出血が特徴で、APTTが延長する。

凝固因子が生まれつき足りない/働かないために二次止血が障害される疾患の代表が『血友病(hemophilia)』である。

血友病A=『第VIII因子』の欠乏、血友病B=『第IX因子』の欠乏で起こる。

どちらも内因系の因子で、欠乏するとAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が延長する。

血友病の原因遺伝子はX染色体上にあり、伴性(X連鎖)劣性遺伝をする。

そのため基本的に雄に発症しやすく、雌は保因者になることが多い。

症状は二次止血異常らしく、皮下・筋肉の血腫、関節内出血、体腔内出血、抜歯や手術のあとにいったん止まった出血が再びにじみ出す(再出血)といった、深く長引く出血が特徴になる。

5二次止血異常②―後天性(殺鼠剤・肝疾患・DIC)

後天性の二次止血異常の代表は、①ワルファリン系殺鼠剤の誤食によるビタミンK欠乏(ビタミンK依存性のII・VII・IX・X因子がつくれず出血)②肝・胆道疾患(凝固因子の多くは肝臓で産生、胆汁不足でビタミンKの吸収も低下)③DIC(凝固因子の消費)。治療として殺鼠剤中毒・ビタミンK欠乏にはビタミンKを投与する。

凝固因子は『その多くが肝臓でつくられる』ため、肝臓やビタミンKに関わるトラブルが後天性の二次止血異常を起こす。

【ワルファリン系殺鼠剤(さっそざい)中毒】イヌ・ネコが殺鼠剤を誤食すると、その成分(ワルファリンなど)がビタミンKの働きを妨げる。

すると後述のビタミンK依存性凝固因子がつくれなくなり、数日たってから重い出血(体腔内出血など)を起こす。

治療はビタミンKの投与。

【肝・胆道疾患】凝固因子の多くは肝臓で産生されるため、重い肝疾患では凝固因子が不足する。

また胆道が詰まって胆汁が腸に出ないと、脂溶性ビタミンであるビタミンKの吸収が落ち、ビタミンK依存性因子がつくれなくなる。

【DIC】全身の凝固活性化で凝固因子が消費され、二次止血も障害される。

【ビタミンK依存性凝固因子】第II(プロトロンビン)・第VII・第IX・第X因子は、肝臓でつくられて正常な凝固活性を獲得するのに『ビタミンK』を必要とする。

覚え方は『2・7・9・10(肉・なな・く・とう)』。

ワルファリンや殺鼠剤、ビタミンK欠乏ではこれらが働かず出血する。

6鑑別の進め方(出血パターン+血小板数+PT/APTT)

止血異常は『出血パターン』『血小板数』『PT・APTT』を組み合わせて鑑別する。点状・粘膜出血+血小板減少→一次止血異常(血小板の問題)。深部・体腔出血+PT/APTT延長→二次止血異常(凝固因子の問題)。PTは外因系+共通系、APTTは内因系+共通系を反映。ビタミンK欠乏・殺鼠剤・肝障害・DICではPT・APTTがともに延長しやすい。

出血性疾患の原因をしぼるには、次の情報を組み合わせる。

【出血パターン】点状出血・粘膜出血が主なら一次止血異常(血小板・vWF・血管)、深部血腫・関節内/体腔内出血が主なら二次止血異常(凝固因子)を疑う。

【血小板数】血小板が著しく減っていれば、血小板減少症(IMT、DIC、感染症など)を考える。

血小板数が正常な一次止血異常ならVWDや血小板機能異常を考える。

【PT・APTT】PT(プロトロンビン時間)は外因系+共通系、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は内因系+共通系を反映する。

血友病(第VIII/IX因子欠乏)ではAPTTが延長し、ビタミンK欠乏・殺鼠剤中毒・肝障害・DICではPT・APTTがともに延長しやすい。

これらを合わせて、『一次か二次か』『先天性か後天性か』を見分けていく。

動物看護では、出血を悪化させない配慮(安静・圧迫止血・筋肉注射を避ける)と、正確な検体採取・観察記録が重要になる。

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