胆道系の病気(胆嚢・胆管)

胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って胆嚢にためられ、総胆管から十二指腸へ出て脂肪の消化を助ける。この通り道(胆道系)の病気を学ぶ。胆汁の流れと、ネコでは総胆管と膵管が合流する解剖、胆道系で上がる検査値(総胆汁酸・閉塞では総ビリルビン)、胆嚢炎・ネコの胆管炎(好中球性・リンパ球性)と三臓器炎、内分泌疾患と関連する胆嚢粘液嚢腫(ムコセール)、肝外胆管閉塞(EHBO)、そしてウルソや胆嚢摘出術などの治療とビタミンK・凝固の注意を、文章と確認問題で理解する。

1胆汁と胆道系のしくみ

胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って胆嚢にためられて濃縮される。食事が入ると胆嚢が収縮し、総胆管を通って十二指腸へ分泌され、脂肪の消化・吸収を助ける。ネコでは総胆管が膵管と合流してから十二指腸へ開くため、膵炎が胆管炎を併発しやすい。

胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って胆嚢でためて濃縮され、総胆管から十二指腸へ出て脂肪の消化を助ける。ネコでは総胆管が膵管と合流してから十二指腸に開くため、膵炎が胆管炎を併発しやすく三臓器炎につながることがある。

胆汁(たんじゅう)は、脂肪の消化・吸収を助ける消化液で、肝臓で作られる。

作られた胆汁は胆管を通って胆嚢(たんのう)にいったんためられ、ここで水分が吸収されて濃縮される。

食事(とくに脂肪)が十二指腸に入ると、その刺激で胆嚢が収縮し、胆汁が総胆管(そうたんかん)を通って十二指腸へ分泌される。

胆汁に含まれる胆汁酸が、脂肪を細かい粒にして(乳化)、消化酵素が働きやすくする。

ネコでは、総胆管が膵臓からの膵管と合流してから十二指腸に開くという解剖学的な特徴があるため、膵炎が起こると胆管にも炎症が及びやすい。

このため、ネコでは胆管炎・膵炎・腸炎が同時に起こる『三臓器炎(トライアディティス)』がみられることがある。

胆道系とは、この胆汁の通り道(肝臓の中の胆管から胆嚢・総胆管まで)をまとめた呼び方である。

2胆道系で上がる検査値

胆汁の流れが滞る(胆汁うっ滞)と、総胆汁酸(TBA)や総コレステロール(T-chol)、ALP・GGTが上昇する。胆管が閉塞すると行き場を失った胆汁色素により総ビリルビン(T-Bil)が上がり、黄疸(粘膜が黄色くなる)が出る。胆汁が出ないと脂溶性ビタミンKの吸収が落ち、凝固異常を起こすことがある。

胆道系の異常は、血液検査の値の変化としてあらわれる。

胆汁の流れが滞った状態(胆汁うっ滞)では、血液中の総胆汁酸(TBA)や総コレステロール(T-chol)が上昇し、ALPやGGT(胆道系の酵素)も上がる。

さらに胆管が詰まる(閉塞性)と、本来胆汁として腸へ出るはずの胆汁色素(ビリルビン)が血液中にあふれ、総ビリルビン(T-Bil)が上昇する。

ビリルビンが増えると、白目や歯ぐき・皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)があらわれる。

また、胆汁は脂肪の吸収を助けているため、胆汁が腸へ出ないと脂溶性のビタミン(とくにビタミンK)の吸収が悪くなる。

ビタミンKは血液を固める因子を作るのに必要なので、不足すると凝固異常(血が止まりにくい)を起こすことがある。

このため、胆道の手術の前には、ビタミンKを補って凝固の状態を整えておくことが大切である。

3胆嚢炎・胆管炎(ネコの胆管炎)

胆嚢炎・胆管炎は、細菌感染、胆石、膵炎、腫瘍(リンパ腫など)をきっかけに起こり、嘔吐・黄疸・腹痛などをみる。ネコの胆管炎は、細菌感染による好中球性(化膿性・急性)と、免疫の異常によるリンパ球性(慢性)に大きく分けられる。好中球性では膵炎・腸炎を伴う三臓器炎が多い。

胆嚢の炎症を胆嚢炎、胆管の炎症を胆管炎という。

原因には、腸から胆道へ細菌が入る細菌感染、胆石、胆道に波及する膵炎、消化管や肝臓のリンパ腫などの腫瘍があり、嘔吐・食欲不振・黄疸・腹痛などの症状を示す。

ネコの胆管炎は、炎症を起こしている細胞のタイプによって大きく分けられる。

好中球性胆管炎は、おもに細菌感染によって起こる化膿性の炎症で、急性に経過することが多く、抗菌薬による治療が必要になる。

リンパ球性胆管炎は、免疫の異常によって起こると考えられる慢性の炎症で、免疫を抑える治療(ステロイドなど)が用いられる。

とくに好中球性胆管炎では、前に述べた解剖の特徴から膵炎や腸炎をともなう三臓器炎となることが多い。

なお、犬では胆嚢の問題(胆嚢炎・胆嚢粘液嚢腫)が、猫では胆管炎が比較的多いという傾向がある。

4胆嚢粘液嚢腫(ムコセール)

胆嚢の中にゼリー状の粘液がたまって胆嚢が拡張する、犬で多い病気。甲状腺機能低下症やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、高脂血症などの内分泌・脂質代謝の異常と関連する。無症状で進むことも多いが、胆嚢が破裂すると胆汁性腹膜炎を起こし命に関わる。

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ、ムコセール)は、胆嚢の中にゼリー状の粘液が過剰にたまって胆嚢が大きく膨らむ病気で、犬で多くみられる。

発症には、脂質の代謝異常が関わると考えられており、甲状腺機能低下症やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、高脂血症などの内分泌・代謝の病気と関連することが知られている。

シェットランド・シープドッグ、シー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザーなど、高脂血症を起こしやすい犬種で多い傾向がある。

初期は無症状で、健康診断の超音波検査で偶然見つかることも多いが、進行すると嘔吐・食欲不振・黄疸・腹痛などが出る。

最も危険なのは、たまった粘液で胆嚢の壁が薄くなって破裂することで、胆汁がお腹の中に漏れて胆汁性腹膜炎を起こすと、命に関わる緊急事態となる。

破裂のリスクがあるため、超音波で胆嚢粘液嚢腫と診断された場合は、胆嚢を取り除く胆嚢摘出術が第一選択の治療になる。

5肝外胆管閉塞(EHBO)

肝臓の外の胆管(総胆管など)が詰まって胆汁が流れなくなる状態。閉塞の場所により、胆管の外からの圧迫、胆管壁の病変、胆管内の閉塞(胆石・粘液栓)に分けられる。原因として膵炎(腫れた膵臓が胆管を圧迫)、胆石、腫瘍などが多い。胆汁が腸へ出ないため強い黄疸と灰白色便がみられる。

肝外胆管閉塞(EHBO)は、肝臓より先の胆管(総胆管など)が詰まり、胆汁が十二指腸へ流れなくなった状態である。

閉塞の起こる場所によって、胆管の外側から押されて詰まるもの(外からの圧迫)、胆管の壁そのものの病変によるもの、胆管の内側が詰まるもの(胆石や粘液の栓)に分けて考える。

原因として多いのは膵炎で、腫れた膵臓が近くを通る総胆管を圧迫して胆汁の流れをさまたげる。

そのほか、胆石(胆管内胆石)、胆道や十二指腸の腫瘍なども閉塞の原因になる。

胆汁が腸へ出られなくなるため、血液中の総ビリルビンが上がって強い黄疸が出る。

また、便に胆汁の色がつかなくなるため、便が白っぽい灰白色になることがある。

膵炎による閉塞では、まず膵炎を治療すると胆汁の流れが回復することもあるが、改善しない場合や胆石・腫瘍では外科的な処置が必要になる。

6治療と看護(内科・外科)

内科では利胆剤のウルソデオキシコール酸(ウルソ)、低脂肪食、感染には抗菌薬(アンピシリン・セファロスポリン・クリンダマイシンなど)を用い、併発する甲状腺機能低下症にはレボチロキシンを補う。外科では胆嚢摘出術が代表で、総胆管の洗浄・カテーテルや胆道のバイパス術もある。胆汁うっ滞では凝固異常に備えビタミンKを補ってから手術する。

胆道系の病気の治療は、原因と重症度によって内科治療と外科治療を組み合わせる。

内科治療では、胆汁の流れをよくする利胆剤のウルソデオキシコール酸(ウルソ・UDCA)、脂肪の負担を減らす低脂肪食、肥満の管理などを行う。

細菌感染(好中球性胆管炎・胆嚢炎)には、アンピシリン、セファロスポリン系、クリンダマイシンなどの抗菌薬を用いる。

胆嚢粘液嚢腫などで併発している甲状腺機能低下症があれば、レボチロキシン(合成T4)を補って脂質代謝を整えることも大切である。

外科治療では、胆嚢を取り除く胆嚢摘出術が代表的で、胆嚢を肝臓の床(胆嚢床)から丁寧にはがして摘出する。

胆管が詰まっている場合は、総胆管をカテーテルで洗浄して通りをよくする処置や、胆汁を腸へ流すための胆道のバイパス手術(胆嚢と腸をつなぐ吻合術など)が行われることがある。

胆汁うっ滞ではビタミンK不足による凝固異常が起こりうるため、手術の前にビタミンKを投与して血が止まりやすい状態に整えておく。

看護では、黄疸の程度や便の色、嘔吐・腹痛・元気食欲の観察、術後の腹膜炎の徴候(腹痛・発熱)への注意、低脂肪食の管理などが役割になる。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト