自己免疫(免疫介在性)疾患と免疫不全

免疫が誤って自分の体を攻撃するのが自己免疫(免疫介在性)疾患。全身の複数の臓器を侵す全身性(SLE・関節リウマチ)と、特定の臓器・細胞を標的にする臓器特異的(IMHA・IMT・重症筋無力症など)に分けられる。免疫が関わる脳炎(NME=パグ脳炎・GME)や、逆に免疫が働かなくなる免疫不全(猫のFIV・FeLV)まで、免疫の異常による病気を整理する。

1自己免疫(免疫介在性)疾患とは

免疫は本来、細菌やウイルスなど『自分でないもの(非自己)』を攻撃する。これが誤って『自分の体(自己)』を異物とみなして攻撃してしまうのが自己免疫疾患で、獣医療では免疫介在性疾患と呼ぶことが多い。攻撃された臓器・組織に炎症や破壊が起こる。

免疫は本来『非自己(細菌・ウイルス)』を攻撃して体を守るが、誤作動して『自己(自分の細胞・組織)』を攻撃すると炎症・破壊が起こるのが自己免疫(免疫介在性)疾患。原因は一次性・二次性に分けられ、治療は免疫抑制療法が基本となる。

免疫は、本来は細菌・ウイルスなどの『自分でないもの(非自己)』を見分けて攻撃し、体を守るしくみである。

ところが、何らかの理由でこのしくみが誤作動し、『自分自身の体(自己)の細胞や組織』を異物とみなして攻撃してしまうことがある。

これによって起こる病気を自己免疫疾患といい、獣医療では『免疫介在性疾患』と呼ぶことが多い。

攻撃された臓器・組織には炎症や破壊が起こり、その場所に応じた症状が現れる。

免疫介在性疾患は、原因がはっきりしない一次性(特発性)と、感染症・腫瘍・薬剤・他の病気などがきっかけで起こる二次性に分けられる。

治療は、暴走した免疫を抑える免疫抑制療法(ステロイドなど)が基本になる。

免疫介在性疾患は、攻撃の範囲によって『全身性』と『臓器特異的』に大きく分けて整理できる。

2全身性と臓器特異的

全身性自己免疫疾患は、全身の複数の臓器が同時に侵されるもので、全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチが代表。臓器特異的自己免疫疾患は、特定の臓器・細胞だけが標的になるもので、赤血球を攻撃するIMHA、血小板を攻撃するIMTなどが代表。

免疫介在性疾患は、攻撃される範囲によって2つに大別される。

全身性自己免疫疾患は、特定の臓器に限らず、全身のいろいろな臓器・組織が同時に侵されるものである。

代表が全身性エリテマトーデス(SLE)で、皮膚・関節・腎臓・血球などさまざまな場所に症状が出る。

関節を中心に侵す関節リウマチも全身性に分類される。

臓器特異的自己免疫疾患は、特定の臓器や細胞だけが標的になるものである。

たとえば、赤血球を攻撃して壊す免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、血小板を攻撃して減らす免疫介在性血小板減少症(IMT)などがある。

両方が重なることもある(たとえばIMHAとIMTが同時に起こるエバンス症候群など)。

『全身性=SLE・関節リウマチ、臓器特異的=IMHA・IMT など、標的が決まっているもの』と整理して覚えるとよい。

3代表的な免疫介在性疾患

臓器特異的なものには、赤血球を壊すIMHA、血小板を減らすIMT、神経筋接合部の受容体を攻撃して筋力低下を起こす重症筋無力症、皮膚に水疱・びらんを起こす天疱瘡などがある。多くは免疫抑制療法(ステロイド・シクロスポリンなど)で治療する。

代表的な免疫介在性疾患をいくつか挙げる。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、自己抗体が赤血球を攻撃して壊し、貧血・黄疸・ヘモグロビン尿などを起こす。

免疫介在性血小板減少症(IMT)は、自己免疫で血小板が破壊され、点状出血・紫斑・血尿などの出血傾向を起こす。

重症筋無力症は、神経から筋肉へ信号を伝える神経筋接合部のアセチルコリン受容体が自己抗体に攻撃され、筋肉が疲れやすく力が入りにくくなる病気である(巨大食道症や運動後の脱力などがみられる)。

天疱瘡(てんぽうそう)は、皮膚や粘膜の細胞どうしの接着が自己抗体に攻撃され、水疱・膿疱・びらん・かさぶたを生じる免疫介在性の皮膚疾患である。

これらの多くは、ステロイド(プレドニゾロン)を中心に、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を組み合わせて治療する。

4免疫介在性脳炎(NME・GME・MUO)

脳・髄膜に免疫が関わる炎症を起こすものがある。壊死性髄膜脳炎(NME=パグ脳炎、パグ・マルチーズ・チワワ等に多い)、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)などで、原因不明のものをまとめてMUOと呼ぶ。診断には脳脊髄液(CSF)検査が役立ち、NMEではCSF中にGFAP(アストロサイト由来)が検出される。

免疫が脳や髄膜(脳をおおう膜)を攻撃して炎症を起こす、免疫介在性が疑われる脳炎(髄膜脳炎)もある。

壊死性髄膜脳炎(NME)は、脳組織が壊死をともなって障害される脳炎で、パグに多いことから『パグ脳炎』とも呼ばれる。

パグのほか、マルチーズ・ヨークシャテリア・ポメラニアン・シー・ズー・チワワなどの小型犬で発症報告が多い。

肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)は、トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどに多い免疫介在性の脳脊髄炎である。

これら原因(感染など)のはっきりしない非感染性の髄膜脳脊髄炎は、まとめて『起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUO)』と呼ばれる。

確定診断には脳組織の病理検査が必要だが、生前は脳脊髄液(CSF)検査やMRIが診断の助けになる。

とくにNMEでは、脳のアストロサイト(星状膠細胞)に由来するGFAPという物質に対する反応がCSFで検出されることが診断の手がかりになる。

完治にいたる効果的な治療法はなく、ステロイドなどの免疫抑制療法を中心に、抗てんかん薬・抗炎症薬などを組み合わせた対症療法が行われる。

5免疫不全(猫のFIV・FeLV)とFIPの違い

自己免疫が『免疫の攻撃しすぎ』なのに対し、免疫不全は『免疫が十分に働かない』状態。猫では、猫免疫不全ウイルス(FIV=猫エイズ)や猫白血病ウイルス(FeLV)が免疫を低下させ、感染症や腫瘍にかかりやすくする。猫伝染性腹膜炎(FIP)は猫コロナウイルスによる別の致死的な病気。

免疫の異常には、免疫が自分を攻撃しすぎる『自己免疫』とは逆に、免疫が十分に働かなくなる『免疫不全』もある。

免疫不全になると、ふだんは抑えられている感染症にかかりやすくなったり、腫瘍ができやすくなったりする。

猫の代表的な免疫不全の原因が、ウイルス感染である。

猫免疫不全ウイルス(FIV)は、いわゆる『猫エイズ』の原因ウイルスで、おもにケンカの咬み傷で感染し、徐々に免疫力を低下させていく。

猫白血病ウイルス(FeLV)は、免疫低下のほか、リンパ腫・白血病などの腫瘍や貧血を引き起こすウイルスである。

これらと混同されやすいのが猫伝染性腹膜炎(FIP)だが、FIPは猫コロナウイルス(FCoV)が体内で変異して起こる、腹水・胸水や多臓器の炎症をきたす致死的な病気で、FIV・FeLVとは原因ウイルスが異なる別の病気である。

免疫不全の猫では、ワクチンや衛生管理、二次感染への注意など、感染を防ぐケアが重要になる。

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