不整脈と心電図の基礎

心臓の電気活動を記録する心電図の基本波形(P波・QRS波・T波・PQ間隔)を押さえたうえで、代表的な不整脈を整理する。刺激の伝わりが遅れ・途切れる房室ブロック(1〜3度)、本来より早く出る期外収縮(心房性・心室性)、そして命に関わる心室頻拍・心室細動と除細動の考え方、不整脈時の動物看護師の役割を学ぶ。

1心電図の基本波形(P・QRS・T と PQ間隔)

心電図は心臓の電気活動を波形で記録する検査。P波=心房の興奮(収縮)、QRS波=心室の興奮(収縮)、T波=心室の回復。P波の始まりからQRS波の始まりまでがPQ(PR)間隔で、心房から心室へ刺激が伝わる時間を表す。

正常な心電図の1拍を示す。P波は心房の興奮(収縮)、QRS波は心室の興奮(収縮)、T波は心室の回復を表し、P波の始まりからQRS波の始まりまでのPQ間隔が心房から心室へ刺激が伝わる時間を示す。

心電図(ECG)は、心臓が拍動するときに生じる電気的な興奮を、体表につけた電極でとらえて波形に記録する検査である。

1拍ごとに、P波・QRS波・T波という波が順に現れる。

P波は心房が興奮(収縮)するときの波、QRS波は心室が興奮(収縮)するときの大きな波、T波は心室が興奮からさめて回復するときの波である。

正常では、まず洞房結節(どうぼうけっせつ)という心臓のペースメーカーから刺激が出て心房が収縮し(P波)、その刺激が房室結節を通って心室へ伝わり心室が収縮する(QRS波)。

P波の始まりからQRS波の始まりまでの時間を『PQ間隔(PR間隔)』といい、心房から心室へ刺激が伝わるのにかかる時間を表す。

この基本がわかると、『どの波が乱れているか』で不整脈の種類を読み解くことができる。

2刺激伝導系(電気の通り道)と脱分極・再分極

心臓は『刺激伝導系』という電気の配線で動く。刺激が伝わる順番は、洞房結節(ペースメーカー)→房室結節→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維。心筋が興奮することを脱分極、もとに戻ることを再分極といい、P波=心房の脱分極、QRS波=心室の脱分極、T波=心室の再分極にあたる。

心臓が規則正しく動くのは、電気の刺激を決まった順番で伝える特殊な心筋『刺激伝導系』があるからである。

刺激が伝わる順番は、洞房結節(どうぼうけっせつ)→房室結節(ぼうしつけっせつ)→ヒス束(ヒスそく)→左脚・右脚→プルキンエ線維、と覚える。

出発点の洞房結節は右心房にあり、自分でリズムを刻んで刺激を出す『ペースメーカー』の役割をもつ。

ここで生まれた刺激が心房全体に広がって心房が収縮し(P波)、房室結節でいったん少し遅れてから、ヒス束・左右の脚・プルキンエ線維を通って心室全体へ一気に伝わり、心室が収縮する(QRS波)。

心筋が電気的に興奮することを『脱分極』、興奮がさめてもとの状態に戻ることを『再分極』という。

心電図の波にあてはめると、P波は心房の脱分極、QRS波は心室の脱分極、T波は心室の再分極を表している(心房の再分極はQRS波に隠れて見えない)。

3標準肢誘導と電極の色(アイントーベンの三角形)

心電図の肢誘導は四肢に電極をつけて記録する。色は赤=右前肢、黄=左前肢、緑=左後肢、黒=右後肢(アース)。標準肢誘導は2点間の電位差で、第I誘導=赤と黄、第II誘導=赤と緑、第III誘導=黄と緑。3点で囲む三角形をアイントーベンの三角形といい、モニターは第II誘導が基本。

心電図の肢誘導(標準肢誘導)は、四肢につけた電極の間の電位差をとらえて記録する。

電極の色は決まっており、赤=右前肢(右手)、黄=左前肢(左手)、緑=左後肢(左足)、黒=右後肢(右足・アース=基準)と覚える。

標準肢誘導は2つの電極の間の電位差をみるもので、第Ⅰ誘導は赤(右前肢)と黄(左前肢)の間、第Ⅱ誘導は赤(右前肢)と緑(左後肢)の間、第Ⅲ誘導は黄(左前肢)と緑(左後肢)の間を記録する。

この3つの誘導が心臓を三方向から囲む三角形になり、これをアイントーベン(Einthoven)の三角形という。

このうち第Ⅱ誘導は、心臓の電気の流れる向きにほぼ沿っていてP波・QRS波が大きく見やすいため、術中や入院中のモニター心電図では第Ⅱ誘導を基本に使うことが多い。

電極の付け間違い(赤と黄を左右逆にするなど)は波形の異常な反転を招くため、色と装着部位の対応を正しく覚えておく。

4房室ブロック(刺激の伝わりが遅れ・途切れる)

房室ブロック(AVブロック)は、心房から心室への刺激の伝わりが障害される不整脈。1度はPQ間隔が延長するだけ(QRSは脱落しない)、2度は時々QRSが脱落、3度(完全房室ブロック)は心房と心室がばらばらに動く。

房室ブロック(AVブロック)は、心房から心室へ刺激を伝える房室結節などの伝導が障害され、刺激の伝わりが遅れたり途切れたりする不整脈である。

障害の程度によって1度・2度・3度に分けられる。

第1度房室ブロックは、伝導が遅くなってPQ間隔が延長するが、すべてのP波のあとにQRS波が続く(心拍は1拍ずつ保たれる)軽いもので、無症状のことが多い。

第2度房室ブロックは、伝導がときどき途切れて、P波のあとに続くはずのQRS波が脱落(欠落)する。

PQ間隔がだんだん延びてやがてQRSが抜けるウェンケバッハ型などがある。

第3度房室ブロックは完全房室ブロックともいい、心房からの刺激が心室にまったく伝わらず、心房と心室がそれぞれ別のリズムでばらばらに動く。

心室の拍数が落ちて失神や運動不耐性を起こすことがあり、ペースメーカーが必要になることもある。

ポイントは『1度=PQ延長のみ、2度=QRS脱落あり、3度=心房と心室が無関係』という重症度の段階である。

5期外収縮(本来より早く出る拍動)

期外収縮(早期収縮)は、洞房結節以外の場所から本来のタイミングより早く刺激が出て生じる拍動。発生源が心房なら心房(上室)期外収縮でQRSは正常幅、心室なら心室期外収縮で先行するP波がなく幅広いQRSになる。

期外収縮(早期収縮)は、本来のリズム(洞調律)より早いタイミングで余分な拍動が現れる不整脈で、発生する場所によって名前と心電図の見え方が変わる。

心房(または房室接合部)から早く刺激が出るものを心房(上室)期外収縮(PAC/SVPC)という。

刺激は通常の経路で心室へ伝わるため、QRS波の形は正常と同じ(幅は狭い)まま、タイミングだけ早くなり、その前に形の異なるP波がみられることが多い。

心室から早く刺激が出るものを心室期外収縮(PVC/VPC)という。

心室が通常の伝導路を介さず直接興奮するため、先行する関連したP波がなく、QRS波の幅が広く(幅広QRS)変形するのが特徴である。

単発の期外収縮は健康な動物でもみられ、必ずしも危険ではない。

しかし心室期外収縮が連続したり多発したりする場合は、心室頻拍や心室細動へ移行する危険があるため注意が必要である。

6心室頻拍・心室細動(致死性不整脈)

心室頻拍(VT)は心室が異常に速く連続して興奮する状態で、心室細動へ移行することがある。心室細動(VF)は心室が無秩序に細かく震えて血液を送り出せなくなる、究極の致死性不整脈。数秒で意識を失い、放置すれば死に至る。

心室から出る異常な刺激が連続し、心室の拍動が異常に速くなる状態を心室頻拍(VT)という。

幅広いQRS波が連続して現れ、血液を送り出す効率が落ちる。

短時間でも危険で、しばしば心室細動へ移行する。

心室細動(VF)は、心室の筋肉が統一されたリズムを失い、無秩序に細かく震える(けいれんする)状態である。

心室がまとまって収縮できないため、血液をまったく送り出せず、実質的に心停止と同じになる。

心室細動が起こると数秒で意識を失い、有効な拍出がないまま放置すれば短時間で死に至る、まさに究極の致死性不整脈である。

心室頻拍や心室細動は、心臓病・重度の電解質異常・低酸素・ショック・中毒・麻酔合併症などをきっかけに起こりうるため、周術期や重症管理ではモニター心電図で常に監視する。

これらの不整脈を心電図で素早く見分け、ただちに対応につなげることが救命のかぎとなる。

7不整脈時の看護と除細動の考え方

心室細動・無脈性心室頻拍には、電気ショックで心臓を一度リセットする『除細動』が適応。一方、心臓が完全に止まり波形が平坦な心静止には除細動は無効で、胸骨圧迫と薬剤が中心。看護師は心電図と全身状態の継続観察、緊急時の準備が役割。

不整脈への対応は種類によって異なる。

心室細動や脈の触れない心室頻拍(無脈性VT)では、心臓に電気ショックを与えて無秩序な興奮を一度止め、正常なリズムの再開をうながす『除細動(電気ショック)』が適応となる。

一方、心臓の電気活動が完全に失われて心電図が平坦になった状態(心静止・フラットライン)には除細動は効果がなく、心肺蘇生(胸骨圧迫)と薬剤投与が中心となる。

『どんな心停止でも電気ショックで動く』わけではない点に注意する。

第1度房室ブロックや単発の期外収縮のように無症状で経過観察となるものから、第3度房室ブロックや致死性不整脈のようにペースメーカーや救命処置を要するものまで、緊急度には幅がある。

動物看護師の役割は、モニター心電図の波形と心拍数、粘膜色・脈・呼吸・意識といった全身状態を継続的に観察し、異常な波形(幅広QRSの連続、QRSの脱落、平坦化など)に早く気づいて獣医師へ報告すること、そして除細動器・救急薬・気道確保の準備を整えておくことである。

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