副腎の腫瘍(褐色細胞腫・原発性アルドステロン症)

副腎にできる腫瘍を、皮質か髄質か・良性か悪性か・ホルモンを出すか(機能性か)で整理する。コルチゾールを出す副腎皮質腫瘍、アルドステロンを出す原発性アルドステロン症、副腎髄質からカテコラミンを出す褐色細胞腫を取り上げ、それぞれの症状と診断(褐色細胞腫の尿中メタネフリン測定など)を、図ではなく文章で読んで学ぶ。

1副腎腫瘍の基礎(皮質・髄質、良性・悪性、機能性・非機能性)

副腎の腫瘍は、できる場所(皮質か髄質か)、良性か悪性か、ホルモンを過剰に出すか(機能性)出さないか(非機能性)で整理する。皮質由来の腺腫・腺癌、髄質由来の褐色細胞腫などがあり、左右どちらか一方が大きい・形がいびつなどの所見から、過形成(肥大)よりも腫瘍を疑う。

副腎の外側の皮質からは腺腫・腺癌ができ、機能性ならコルチゾール過剰(クッシング)やアルドステロン過剰を起こす。内側の髄質からは褐色細胞腫ができ、カテコラミンを過剰に分泌する。

副腎の腫瘍を理解するには、3つの軸で整理するとよい。

1つめは『できる場所』で、外側の皮質から発生するもの(腺腫・腺癌)と、内側の髄質から発生するもの(褐色細胞腫)がある。

2つめは『良性か悪性か』で、良性の腺腫と悪性の腺癌に分かれる。

3つめは『ホルモンを出すか』で、ホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍と、分泌しない非機能性腫瘍がある。

機能性であれば、出すホルモンに応じてコルチゾール過剰(クッシング)、アルドステロン過剰、カテコラミン過剰などの症状が出る。

画像検査では、左右どちらか一方の副腎だけが大きい、形がいびつ(不整)であるといった所見から、左右が均等に大きくなる過形成(肥大)よりも腫瘍を疑う手がかりになる。

2クッシング症候群と副腎腫瘍

犬の代表的な内分泌疾患であるクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、多くが下垂体腫瘍のACTH過剰産生による下垂体性(PDH)で、副腎皮質腫瘍がコルチゾールを過剰に出すものは比較的少ない。スクリーニングや鑑別に低用量デキサメタゾン抑制試験などが用いられる。

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、犬では代表的な内分泌疾患である。

その多くは、下垂体が腫瘍化してACTHを過剰に産生する下垂体性(PDH)で、両側の副腎が刺激されてコルチゾールを出しすぎる。

一方、副腎皮質そのものの腫瘍が糖質コルチコイド(コルチゾール)を過剰に産生するもの(副腎性)は、下垂体性に比べると比較的少ない。

診断では、まずコルチゾール過剰があるかを調べるスクリーニング検査として低用量デキサメタゾン抑制試験などを行い、さらに画像検査やACTHの値などを組み合わせて、下垂体性か副腎性かを鑑別していく。

どちらの型かによって治療方針(内科管理か、副腎腫瘍の外科切除か)が変わるため、鑑別が重要になる。

3原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症は、副腎皮質(球状帯)の腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌する病気。アルドステロン過剰により、ナトリウムと水をため込んで高血圧になり、カリウムを失って低カリウム血症になる。ネコでは散発的に報告され、イヌではごく稀。

原発性アルドステロン症(コーン症候群)は、副腎皮質の球状帯にできた腫瘍が、上位の指令と関係なくアルドステロンを過剰に分泌する病気である。

アルドステロンは腎臓でナトリウムを再吸収し、代わりにカリウムを尿へ捨てるホルモンなので、過剰になると体に水とナトリウムをため込んで高血圧を起こし、カリウムを失って低カリウム血症になる。

低カリウム血症では、筋力低下(首が下がる頸部の屈曲など)がみられることがある。

発生としては、ネコで散発的に報告される一方、イヌではごく稀である。

低カリウム血症や画像での副腎の腫大が診断の手がかりになり、アルドステロンを出す腫瘍が特定できれば外科的な切除が根本的な治療となる。

4褐色細胞腫と診断(尿中メタネフリン)

褐色細胞腫は、副腎髄質から発生してカテコラミン(アドレナリンなど)を過剰に産生・分泌する腫瘍。発作的な高血圧・頻脈・興奮などを起こす。診断が難しい腫瘍で、腹部超音波に加え、尿中のメタネフリン・ノルメタネフリンとクレアチニンの比の測定が有用。

褐色細胞腫は、副腎の髄質から発生し、カテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)を過剰に産生・分泌する腫瘍である。

カテコラミンが過剰になると、発作的な高血圧、頻脈、興奮、ふるえなどの症状が現れる。

症状が出たり出なかったりするため診断が難しい腫瘍として知られる。

診断では、腹部超音波検査で副腎の腫大を確認するとともに、カテコラミンの代謝産物である尿中のメタネフリン・ノルメタネフリンと、尿中クレアチニンの比を測定することが有用である。

確定には、手術で切除して病理組織検査を行う。

手術の際は、麻酔や処置の刺激でカテコラミンが大量に放出され、血圧や心拍が急変する危険があるため、周術期の慎重な管理が必要になる。

5副腎腫瘍の診断と治療のまとめ

副腎腫瘍は、画像(超音波・CT)で副腎の腫大や左右差・浸潤を確認し、機能性かどうかは各ホルモン(コルチゾール・アルドステロン・カテコラミン代謝物)の検査で調べる。機能性で切除可能なら外科的切除が根本治療。周術期はホルモン変動による急変に注意する。

副腎腫瘍の診断は、まず画像検査(腹部超音波やCT)で副腎の腫大、左右差、周囲への浸潤や血管内への進展がないかを評価する。

次に、その腫瘍がホルモンを出す機能性かどうかを、コルチゾール(クッシング)、アルドステロン(アルドステロン症)、カテコラミンの代謝物(褐色細胞腫)といった検査で確かめる。

治療は、機能性で切除が可能な腫瘍であれば、外科的に切除するのが根本的な治療となる。

ただし、副腎腫瘍の手術はホルモンの急な変動(褐色細胞腫のカテコラミン放出、副腎皮質腫瘍切除後のコルチゾール不足など)による急変のリスクがあるため、周術期のモニタリングと管理が特に重要である。

切除が難しい場合は、症状を抑える内科的な管理が行われる。

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