血液凝固のしくみと凝固因子

出血を止める止血は、まず血小板が栓をつくる一次止血と、凝固因子が連鎖反応してフィブリンの網で固める二次止血からなる。二次止血の経路には、内因系・外因系・共通系がある。第I〜XIII因子の名称、ビタミンKが必要な凝固因子(II・VII・IX・X)、カルシウムイオンやリン脂質の役割、そしてプロトロンビン→トロンビン→フィブリンという中心の流れを整理する。

1一次止血と二次止血

血管が傷つくと、まず血小板が傷口に集まって栓をつくる(一次止血)。続いて、血液中の凝固因子が次々に反応して『フィブリン』という線維をつくり、血小板の栓を補強して丈夫な血の塊(血餅)にする(二次止血)。

止血は2段階で進む。まず血小板が傷口に集まって血小板血栓をつくり(一次止血)、続いて凝固因子の連鎖反応(凝固カスケード)がフィブリンをつくって血栓を補強し、丈夫な血餅にする(二次止血)。

出血を止めるしくみ(止血)は、大きく2段階で進む。

まず、血管が傷つくと、その傷口に血小板が集まって粘着・凝集し、栓(血小板血栓)をつくる。

これを一次止血という。

比較的小さな傷は、これだけで一時的に止まる。

しかし血小板の栓だけではもろいため、次に血液中の『凝固因子』が連鎖的に反応して、最終的に『フィブリン』という丈夫な線維をつくり出す。

フィブリンが網のように血小板の栓を包み込んで補強し、しっかりした血の塊(血餅=けっぺい)にする。

これが二次止血である。

二次止血で働く凝固因子の連鎖反応は、ドミノ倒しのように次々と進むことから『凝固カスケード(瀑布)』と呼ばれる。

この二次止血の経路には、内因系・外因系・共通系という流れがあり、それを次に整理する。

2内因系・外因系・共通系

二次止血の経路は3つ。内因系は血液内の因子(XII→XI→IX→VIII)で始まる。外因系は血管の外(組織)の『組織因子(第III因子)』と第VII因子で始まる。両者は第X因子で合流し、共通系(X→V→プロトロンビン→フィブリノゲン→フィブリン)へ進む。

凝固カスケードは、始まり方のちがいで内因系と外因系に分かれ、途中から共通系に合流する。

内因系(内因性経路)は、血液の中の因子だけで始まる経路で、第XII因子→第XI因子→第IX因子→第VIII因子という順に活性化が進む。

外因系(外因性経路)は、血管の外=組織から出る『組織因子(第III因子、組織トロンボプラスチン)』が、第VII因子と結びついて始まる経路である。

けがで組織が傷ついたときにすばやく働く。

内因系と外因系は、どちらも第X因子を活性化するところで合流する。

ここから先が共通系(共通経路)で、第X因子→第V因子→プロトロンビン(第II因子)→フィブリノゲン(第I因子)→フィブリン、そして第XIII因子による安定化、という流れで進む。

覚え方として、内因系は『12・11・9・8』、外因系は『組織因子(3)と7』、共通系は『10・5・2(プロトロンビン)・1(フィブリノゲン)・13』と数字で整理しておくと、後の凝固検査(PT・APTT)の理解にもつながる。

3おもな凝固因子(第I〜XIII因子)

第I因子=フィブリノゲン、第II因子=プロトロンビン、第III因子=組織因子、第IV因子=カルシウムイオン、第VIII因子=抗血友病因子、第IX因子=クリスマス因子、第X因子=スチュアート因子、第XII因子=ハーゲマン因子、第XIII因子=フィブリン安定化因子。第VI因子は欠番。

おもな凝固因子には、ローマ数字の番号とともに固有の名前がついている。

代表的なものを挙げる。

第I因子はフィブリノゲン(フィブリンのもと)、第II因子はプロトロンビン、第III因子は組織因子(組織トロンボプラスチン)、第IV因子はカルシウムイオン(Ca²⁺)である。

第V因子はプロアクセレリン、第VII因子はプロコンバーチン(安定因子)、第VIII因子は抗血友病因子、第IX因子はクリスマス因子、第X因子はスチュアート(−プラウア)因子である。

第XI因子はPTA(血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子はハーゲマン因子、第XIII因子はフィブリン安定化因子(フィブリンを丈夫にする)である。

なお、第VI因子は現在は使われない欠番である。

血友病は、このうち第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)が欠乏・低下して出血が止まりにくくなる、X連鎖の病気として重要である。

4凝固に必要なもの(カルシウム・リン脂質・ビタミンK)

凝固反応には、凝固因子のほかにカルシウムイオン(第IV因子)と、血小板膜などのリン脂質が必要。さらに、第II・VII・IX・X因子は肝臓でつくられるときにビタミンKを必要とする『ビタミンK依存性凝固因子』。ワルファリン(抗凝固薬)はこの働きを邪魔する。

凝固カスケードがきちんと進むには、凝固因子だけでなく、いくつかの条件が必要である。

1つはカルシウムイオン(Ca²⁺=第IV因子)で、多くの凝固反応の進行に欠かせない(採血した血液に抗凝固剤を入れてCaを除くと固まらないのはこのため)。

もう1つはリン脂質で、血小板の膜などが反応の足場を提供する。

さらに重要なのが、ビタミンKである。

第II(プロトロンビン)・第VII・第IX・第X因子は、肝臓でつくられるときにビタミンKを必要とするため『ビタミンK依存性凝固因子』と呼ばれる(2・7・9・10と覚える)。

そのため、ビタミンKが不足したり(ビタミンK欠乏)、肝臓が悪くなったりすると、これらの因子がつくれず出血傾向になる。

抗凝固薬のワルファリン(殺鼠剤にも含まれる)は、このビタミンKの働きを妨げて凝固を抑える。

殺鼠剤を誤食した動物が出血するのはこのためである。

5凝固の中心の流れ(プロトロンビン→トロンビン→フィブリン)

共通系の中心は、プロトロンビン(第II因子)が活性化されてトロンビンになり、トロンビンがフィブリノゲン(第I因子)をフィブリンに変える反応。これにカルシウムイオンが関わる。できたフィブリンは第XIII因子で安定化され、丈夫な血餅になる。

凝固カスケードの中心となる反応を、流れで押さえておく。

内因系・外因系を経て第X因子が活性化されると、第X因子(と第V因子、リン脂質、カルシウムイオン)が、プロトロンビン(第II因子)をトロンビン(活性型)に変える。

次に、できたトロンビンが、血液中に溶けているフィブリノゲン(第I因子)に働きかけ、これを線維状のフィブリンに変える。

カルシウムイオンもこの過程に関わる。

さらにトロンビンは第XIII因子も活性化し、第XIII因子がフィブリンどうしを結びつけて(架橋して)、より丈夫で安定したフィブリン(安定化フィブリン)にする。

こうしてできた丈夫なフィブリンの網が血小板の栓を包み込み、しっかりした血餅となって止血が完成する。

つまり中心の流れは、『プロトロンビン→(トロンビン)→フィブリノゲンをフィブリンに変える』であり、この一文を覚えておくと凝固全体の理解の軸になる。

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