社会化期と問題行動

子犬・子猫が、人・他の動物・さまざまな環境に慣れていくことを『社会化』という。これがもっとも進みやすい『社会化期』は、犬でおよそ生後3〜12週、猫で生後2〜7週ごろ。この時期の経験が将来の性格・行動に大きく影響する。社会化の重要性、馴化、分離不安・攻撃行動・不適切排泄などの問題行動とその予防・対応を学ぶ。

1社会化と社会化期

社会化とは、子犬・子猫がさまざまな人・動物・物・音・環境に触れて、それらを『こわくないもの』として受け入れていくこと。社会化がもっとも進みやすい時期(社会化期)は、犬でおよそ生後3〜12週、猫で生後2〜7週ごろ。

犬(およそ3〜12週)と猫(およそ2〜7週)の社会化期を週齢の目盛りで示した図。犬が3〜7・8週ごろに母犬・きょうだいから学ぶこと、8週齢(生後56日)以下の販売制限もあわせて示す。

社会化とは、子犬・子猫が、いろいろな人・ほかの動物・見慣れない物・聞き慣れない音・さまざまな環境などに触れて、それらを『こわくない・安全なもの』として受け入れ、適応していくことをいう。

社会化がもっとも進みやすい、感受性の高い時期を『社会化期』という。

社会化期は、犬でおよそ生後3〜12週(およそ3週〜3か月半ごろ)、猫で生後2〜7週ごろとされる(資料により多少幅がある)。

この時期に、いろいろな経験を、こわい思いをせず楽しく積むことが、その子の将来の性格や行動に大きく影響する。

とくに犬では、生後3〜7、8週ごろに、母犬やきょうだいと過ごしながら、犬どうしのコミュニケーションや、噛む力の加減(噛みつきの抑制)などを学ぶ。

早く親・きょうだいから引き離されると、こうした社会性が育ちにくい。

(動物愛護管理法で生後56日〔8週齢〕以下の販売が制限されているのも、社会性を育てる時期を確保する意味がある。

2社会化の重要性と馴化

社会化期に十分な経験を積めないと、見慣れないものに対する不安・恐怖が強くなり、吠える・噛む・怖がるといった行動につながりやすい。さまざまな刺激にくり返し触れて『慣れる』ことを馴化(じゅんか)といい、社会化の基本になる。

社会化期に、いろいろな経験が不足したり、こわい思いをしたりすると、見慣れないもの・初めてのことに対する不安や恐怖心が強くなる。

その結果、知らない人や犬に吠える・噛みつく、物音や場所を極端に怖がる、といった行動につながりやすくなる。

社会化の基本になるのが『馴化(じゅんか)』である。

馴化とは、ある刺激にくり返し触れているうちに、それに慣れて反応が弱まる(こわがらなくなる)ことをいう。

たとえば、生活音・来客・他の動物・車・動物病院などに、無理のない範囲で少しずつ触れさせ、よい経験(おやつ・ほめるなど)と結びつけて慣らしていく。

社会化は、こわい経験をさせるのではなく、楽しく・無理なく慣れさせることが大切である。

怖い思いをすると、逆に苦手意識(感作)が強まってしまう。

社会化期を過ぎても社会化はできるが、より時間と工夫が必要になる。

だからこそ、子犬・子猫の早い時期からの計画的な社会化が重要である。

(ワクチンプログラムとの兼ね合いに配慮しつつ、安全な範囲で社会化を進める。

3代表的な問題行動

飼い主が困る『問題行動』には、留守番中に不安で吠える・壊す・排泄するなどの分離不安、人や動物への攻撃行動、決められた場所以外でする不適切排泄などがある。これらの背景には、不安・恐怖・社会化不足・身体の病気などが隠れていることが多い。

動物の行動のうち、飼い主や周囲が困るものを『問題行動』という。

代表的なものを挙げる。

分離不安は、飼い主と離れて留守番するときに強い不安を感じ、過剰に吠える・鳴く、物を壊す、いつもと違う場所で排泄する、自分の体をなめ続けるなどの行動を示すものである。

攻撃行動は、人やほかの動物に対して、うなる・噛みつく・威嚇するなどの行動で、恐怖・縄張り・痛み・資源(食べ物・場所)の防衛など、さまざまな原因がある。

不適切排泄は、トイレとして決められた場所以外で排泄してしまうもので、トイレの環境・場所の問題、不安・ストレス、去勢前のマーキング、あるいは膀胱炎などの病気が背景にあることもある。

そのほか、過剰な吠え、常同行動(同じ動作のくり返し)などもある。

問題行動の多くは、不安・恐怖・社会化不足が関わっていることが多いが、身体の病気(痛み・内分泌異常・泌尿器疾患など)が原因のこともあるため、まず病気を除外することが大切である。

4問題行動への対応の考え方

問題行動は、叱る・罰するだけでは改善しにくく、かえって悪化することもある。原因(不安・恐怖・病気など)を探り、環境を整え、望ましい行動を教えて良い行動をほめる(正の強化)ことが基本。まず病気が隠れていないかを確認することも重要。

問題行動への対応では、まず『なぜその行動が起きているのか』を理解することが出発点になる。

大切なのは、頭ごなしに叱る・罰するだけでは、多くの問題行動は改善しにくく、かえって不安や恐怖を強めて悪化させることがある、という点である。

とくに、恐怖や不安が原因の行動を罰すると、人への信頼を損ない逆効果になりやすい。

基本的な考え方は、①身体の病気が隠れていないか確認する(痛みや病気が原因のことがある)、②不安・恐怖の引き金となる環境を見直して整える、③望ましい行動を教えて、良い行動ができたらほめる・ごほうびを与える(正の強化)、④苦手な刺激には少しずつ慣らす(馴化・系統的脱感作)、といったものである。

重症の場合は、行動学の専門家(獣医行動診療科など)への相談や、不安をやわらげる薬を併用することもある。

動物看護師は、飼い主から行動の様子をていねいに聞き取り、生活環境や接し方のアドバイス、専門家への橋渡し、そして子犬・子猫期からの社会化の重要性の啓発を行う役割をもつ。

5社会化・問題行動と動物看護

看護では、子犬・子猫の社会化(人や環境に慣らす、動物病院を怖い場所にしない)の支援、問題行動の聞き取りと記録、飼い主への接し方の助言が役割。動物病院での恐怖を減らす扱い(やさしい保定・おやつの活用など)も、その子の一生の通院に関わる大切な配慮。

社会化や行動の問題は、その動物の生活の質と、飼い主との関係に深く関わるため、動物看護師の役割は大きい。

子犬・子猫の時期には、飼い主に社会化の重要性と進め方(いろいろな人・音・場所に楽しく慣らす、噛みつきや甘噛みへの対応など)を伝える。

動物病院そのものを『こわい場所』にしないことも大切で、やさしい声かけ・無理のない保定・おやつやおもちゃの活用などで、できるだけ怖い経験をさせない工夫(恐怖の少ない動物の扱い)を心がける。

これは、その子が一生通院するうえで重要な配慮である。

問題行動については、飼い主から『いつ・どんな状況で・どんな行動が起こるか』をていねいに聞き取って記録し、身体の病気の確認や専門家への相談につなげる。

罰ではなく、望ましい行動をほめて伸ばす関わり方や、環境を整える工夫を、飼い主にわかりやすく伝えることが、問題行動の予防・改善を支えることになる。

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