動物の遺伝と遺伝性疾患

親から子へ形質が伝わる遺伝のしくみと、遺伝子の変化によって起こる遺伝性疾患を学ぶ。遺伝の基礎、遺伝性疾患とは何か、犬種・猫種で多い代表的な遺伝性疾患、繁殖による予防、そして看護・飼い主への関わりまでを、図ではなく文章で読んで理解する。

1遺伝の基礎

親の特徴(形質)は、染色体上の遺伝子(DNA)を通じて子に伝わる。遺伝子には現れやすい顕性(優性)と現れにくい潜性(劣性)があり、もっている遺伝子の組み合わせ(遺伝子型)によって表に出る特徴(表現型)が決まる。

顕性Aと潜性aを1つずつもつ父母(Aa×Aa)から生まれる子の遺伝子型と表現型。潜性aの特徴は、父母の両方からaがそろったaaのときだけ表に現れる。

親から子へ、体の色や形・体質などの特徴(形質)が伝わることを遺伝という。

形質の設計図は遺伝子で、遺伝子はDNAという物質でできており、細胞の核の中の染色体に収められている。

子は、父と母の両方から遺伝子を受け継ぐ。

遺伝子には、組み合わさったときに特徴が表に現れやすい顕性(優性)と、現れにくい潜性(劣性)がある。

もっている遺伝子の組み合わせを遺伝子型、その結果として実際に表に現れる特徴を表現型という。

潜性の特徴は、同じ潜性の遺伝子が父母の両方からそろったときに現れる。

2遺伝性疾患とは

遺伝性疾患は、遺伝子の変化が原因で起こる病気。純血種は特徴を固定するため近親性が高く、遺伝性疾患が出やすい。潜性遺伝の病気では、発症していないが原因遺伝子をもつ保因者(キャリア)が存在する。

遺伝性疾患とは、遺伝子の変化(異常)が原因で起こる病気である。

純血種は、特定の見た目や性質を固定するために近い血どうしでの交配が重ねられてきたことから、近親性が高く、同じ遺伝性疾患が出やすい傾向がある。

そのため、犬種・猫種ごとに『なりやすい遺伝性疾患』がある。

潜性遺伝の病気では、原因となる遺伝子を1つだけもっていて発症はしていないが、子に伝える可能性のある個体が存在する。

これを保因者(キャリア)という。

見た目は健康な保因者どうしをかけ合わせると、発症する子が生まれることがあるため、繁殖では注意が必要である。

3代表的な遺伝性疾患

股関節形成不全や膝蓋骨脱臼などの整形外科疾患、進行性網膜萎縮(PRA)などの眼疾患、特定の心疾患、短頭種の気道の問題、ペルシャ猫などの多発性嚢胞腎(PKD)など、犬種・猫種に関連した遺伝性疾患が知られる。

犬種・猫種に関連した遺伝性疾患には、さまざまなものがある。

整形外科では、大型犬に多い股関節形成不全や、小型犬に多い膝蓋骨脱臼などに遺伝的な素因が関わる。

眼では、網膜が徐々に衰えて視力を失う進行性網膜萎縮(PRA)などが知られている。

心臓では、特定の犬種・猫種で多い心疾患がある。

短頭種では、顔の構造に由来する短頭種気道症候群が起こりやすい。

猫では、ペルシャなどで多い多発性嚢胞腎(PKD、腎臓に多数の嚢胞ができる病気)などがある。

犬種・猫種の好発疾患を学ぶことは、こうした遺伝性疾患の早期発見にもつながる。

4繁殖による予防

遺伝性疾患を減らすには、発症個体や保因者を繁殖に使わないこと、近親交配を避けることが基本。遺伝子検査で保因者を調べられる病気もある。健全な繁殖はブリーダーの大切な責任である。

遺伝性疾患は、いったん広まると同じ品種の中で受け継がれていくため、繁殖の段階での予防が重要になる。

基本は、遺伝性疾患を発症している個体や、その原因遺伝子をもつ保因者を繁殖に用いないことである。

また、近い血どうしをかけ合わせる近親交配は、潜性の遺伝性疾患が現れる確率を高めるため、避けることが望ましい。

病気によっては、遺伝子検査によって発症の有無や保因者かどうかを調べられるものもあり、繁殖の判断に役立てられる。

見た目の特徴だけでなく、健康を重視した健全な繁殖を行うことは、動物を扱う者(ブリーダー)の大切な責任である。

5看護・飼い主への関わり

犬種・猫種ごとの好発疾患を知り、早期発見や予防に活かす。飼い主には遺伝性疾患の可能性や検査を分かりやすく伝える。ただし品種だけで決めつけず、個体差も大きいことをふまえて関わる。

遺伝の知識は、看護や飼い主への助言にも役立つ。

その犬種・猫種でなりやすい遺伝性疾患を知っておくことで、早期発見や予防、適切な健康管理につなげられる。

これから動物を迎える飼い主や繁殖を考える飼い主には、品種に関連した遺伝性疾患の可能性や、利用できる遺伝子検査について、分かりやすく情報を伝える。

一方で、同じ品種でも実際に発症するかどうかには個体差があり、すべての個体がその病気になるわけではない。

『この品種だから必ずこうなる』と決めつけず、品種の傾向を手がかりにしながら、その子自身をよく観察して関わることが大切である。